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機織り職人の仕事場から…

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織機の道具置き場

ただ今、織り幅91㎝の蓮糸の服地を織っています。
普段使っている小幅(反物・帯用)の機と比べると織り幅はほぼ倍になるため、
織機の扱いもずいぶんと勝手が違ってきます。

いつもなら杼箱からすぐ取り出すことのできる“握りバサミ”などの小さな道具類も、
この度は機の横に置いた台の上に置かなくてはなりません。

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蓮の糸は切れやすく、また併せて使っている玉糸も節が多いため
“握りバサミ”や“毛抜き”などは頻繁に使います。

しかしこれらの道具類もこの位置にあると、使うたびに体を倒して
大きく腕を伸ばさなければ手にすることが出来ません。

そこで、このストレスを解消するために“道具置き場”を機に直接取り付けました。

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太い孟宗竹を割って棒状にし、これを木ネジで機に直接取り付けます。
つまり“小さな囲い”を作るのです。

中にはフエルトを敷いて振動で音が鳴るのを防ぎます。

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使用頻度の高いこれらの道具たちがこの位置にあれば無理なく手に取ることが出来るので、
作業中のストレスが大幅に軽減されました。

快適に仕事をするために、そして作業効率を上げるためにも、
道具類の配置はとても重要なことだと思います。


# by kageyama_kobo | 2024-03-28 21:26 | 道具の話

糸味たっぷりの布を織る

久し振りのブログアップです。
今回はこちらも久しぶりの広幅の布を織り始めました。

いつも使っている“小幅の機”を解体して片付け、
代わりに筬幅91㎝が織れるこの広幅の織機を組み立てました。

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「蓮の糸でシャツの生地を織って欲しい」という依頼を受けました。

依頼主との何回かのやり取りを経て、
生成色の蓮糸と、焦げ茶に染めた絹糸を組み合わせることになりました。

最後に糊落としをして“砧打ち”で仕上げたらきっと柔らかい布になる事を想定して、
それでも布目はしっかりと密度を保てるよう
緯糸一本に対して筬を4~5回打ちます。

織り幅は91㎝あるので、布全体に均等に筬が打ち込まれるよう
筬柄を両手で持ってしっかり打ち込みます。

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織り方は崩し織り(網代織)です。
経緯に5本の縞が立つ“五崩し”と呼ばれる柄になります。

蓮の糸は切れやすく、おまけに経糸に使った絹糸(玉糸)は節が多く、
この節の毛羽立ちが絡まなければいいなと心配していたのですが、
今のところ大きなトラブルもなく順調に織れています。

蓮の糸も玉糸も太さが均一ではないため、この糸が経緯に組み合わさって
糸味たっぷりの布が織り上がっています。

まさに私の一番好きな布です。


機の上のこの布でどんなシャツが出来上がるのか、今からとても楽しみです。


# by kageyama_kobo | 2024-03-26 13:10 | 染めと織りの素材

第14回 影山工房公開講座 開催します

<<< 14 影山工房公開講座のご案内 >>>

影山工房は創業より70年間培ってきた織物のノウハウを次の世代に伝える事を目的として『影山工房公開講座

を開催します。多くの先人たちが伝えてくれた技法や知識に加え、仕事の中から生まれたアイデアなどを織り

交ぜて8項目のテーマで講座を開きます。 

貴方の織物のスキルアップにつながるよう、織物歴50年の職人が自身の工房と仕事を紹介しながら解説します。


◎受講生にとって充実した講座となるよう、各講座は定員を5名とします。

会期内の受講申し込みは一人3講座までとしてください。

静岡県富士宮市の影山工房が会場です。

        講師 影山 秀雄

<<< 講 座 内 容 >>>

 私が使う織り道具 (対象:初心者~上級者) 定員まであと1名

織物の作業には多くの道具が必要です。私が日頃使っている道具たちを紹介しながら、プロの目から見た道具の選び方

扱い方・メンテナンスの方法などを解説します。講座でお話しするいくつかの方法を実践すれば、今まで使っていた道具

たちが見違えるほど使いやすくなるかもしれません。


 私の好きな糸の話 (対象:初心者~上級者) ●定員になりました

影山工房では絹や木綿に始まり麻,羊毛,野蚕,カシミヤ,ヤク,ハスなど様々な糸を用いて布を織ります。これらの糸と

その糸で織られた布を手に取ってご覧いただきながら、糸の特徴や効果的な使い方など私が感じる糸の魅力について

お話しします。


 平織りの可能性 (対象:初心者~上級者) ●定員になりました

我が家で織る布はほとんどが平織りです。70年間織り続けてそれでも飽きることのない平織りの魅力とは? 素材を選び

、色を選び、糸の太さや密度を使い分けることで、シンプルな組織の平織りに実は無限の可能性が潜んでいることに気付

かされます。私が織った布たちをサンプルに平織りをデザインするためのアイデアを紹介します。 


 織物に役立つ糸結び・紐結び (対象:初心者~上級者)  ●定員になりました

織物の素材は糸。そしてその糸を布にする工程の中には“結ぶ”という作業が頻繁に登場します。私が日ごろ仕事で多用

する様々な糸結び・紐結びを実技を交えて紹介します。ほんの数種類の結び方を身に付けることで、織物の作業がより

効率よく行えるようになります。


 糸を巻く・糸を計る (対象:中級者~上級者)  ●定員になりました

糸の扱いは織物の基本中の基本。糸にも織り手にもストレスのない糸の扱い方。個性的で魅力的だけど扱いにくい糸を

何とか織り手の思い通りに扱うためのあの手この手。糸の番手と整経のための計算法。扱いやすいカセ、解きやすい

カセの作り方などを解説します。受講される方は電卓持参でおいで下さい。


 縞を作る・柄を創る 対象:中級者~上級者) ●定員になりました

粋な縞と野暮な縞。この違いはどこにあるのでしょうか。伝統柄から独創的なデザインの方法まで、私が日頃応用

している縞作りのヒントを紹介しながら美しい縞を作る方法を考えましょう。実際に糸を縞模様に並べるシンプルで

効率的な技法も実演します。


※以下の専修講座①②は、影山工房の織物の基本的な部分をご理解いただいた方に、より深く学んでいただくため

講座です。そのため、上記①~⑥の講座をすべて受講した人が受講対象となります。

(ご自身の受講記録を知りたい場合はお問い合わせください)


⑦専修講座-1 やたら縞を楽しむ (対象:上級者、①~⑥を受講済みの方) ●定員まであと3名

単調になりがちな縞のデザインに変化をつけたいと思ったら“やたら縞”を作ってみませんか。色のやたら・縞の太さ

やたら。組み合わせを考えると無限の可能性をもつやたら縞ですが、いざ作ろうと思うとどのように“やたら”を作れば

いいのか迷ってしまいます。その“やたら”をデザインする方法のいくつかを、実例をご覧いただきながら解説します。


⑧専修講座-2 紬を織るということ (対象:上級者、①~⑥を受講済みの方) ●定員まであと2名

影山工房が60年間織り続けてきた「紬」。糸の選び方、糸の太さと筬の関係、色の決め方、糊付けの方法、経糸のテン

ション、小管の巻き方、筬の打ち方、糊落とし、砧打ち、仕上げの方法など、私が紬を織る技法の全てを解説します。

実際に紬を織っている方が対象です。(この講座のみ受講料10,000


受講料は一講座4,000(⑧以外)。受講を希望される方は(氏名、住所、電話番号、受講を希望する日時と講座名

を明記の上、ファックスかメールにて下記までお申込み下さい。折り返し受付確認の連絡を差し上げます。


申込先 手機織処 影山工房 Fax:0544-27-0054 Mail:kageyamakobo@factory.tnc.ne.jp


※出席者には受付終了後に会場までの交通機関のご案内をお届けします。


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# by kageyama_kobo | 2024-02-13 13:34

織道具機料善 最後の“織り伸子”を制作

紬の反物を織る時、織り際で織り幅の縮みを防ぐために“織り伸子(しんし)”と言う道具を使います。
市販には使いやすい物がないため、我が家では父の代から自作の物 を使ってきました。

2013年に、さらに使いやすい“織り伸子”は出来ないものかと試作を始めました。

そして出来たのが織り幅を1尺5分から1尺1寸5分まで可変できる伸子 です。

作っては試しを繰り返して自分でも納得のいくものが出来上がったので、
2014年の公開講座で“機料善デビュー”しました。


この伸子は使っていただいた方々からも好評を得て制作者としては嬉しい限りなのですが、
制作の工程が多岐に亘り、とにかく時間が掛かります。


まずは竹を切る所から。
竹の水分が一番少ない11月から12月にかけて、知人の竹藪から真竹を切り出します。

この竹を一年以上寝かせて乾燥させ…
時期を見計らって長さを切り揃え、必要な幅に割ります。

小刀とサンダーを使って成形し、両端の曲げ加工を行います。

先端に付ける針はステンレスの針金を、
布に刺さりやすく抜けやすい角度に一本一本削って作ります。

長さ調節ができるよう、押えの皮ベルトを加工します。
一本づつ微妙にプロポーションが違うので、ベルトの締め具合は一本づつ調整します。

最後に“機料善”の焼き印を押して完成です。


…と言葉にしてしまえば以上なのですが、この作業に暮れから正月明けまで約半月も掛かってしまいました。

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何故こんなにたくさん作らなくてはならなかったのかと言うと、
10月に開催した公開講座で、“機料善”の注文用紙にこの“織り伸子”を記載してあったため
想定外の10本もの注文が入ってしまったからなのです。

私が記載したものを後から「できません」とは言えないので今回は頑張って作りましたが
作業工程の多さが大変で、正直もう作りたくありません。


なのでこの記事を読んだあなた。
「この伸子を欲しい!」なんて、決して思わないで下さいね!


# by kageyama_kobo | 2024-01-09 22:55 | 道具の話

静岡市・亀山画廊作品展 始まりました

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静岡市の亀山画廊での作品展“第七回 影山秀雄織りもの展 機織り職人の糸あそび”を開催しています。

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今回の展示はこんな感じ。入口から向かって右側はインテリア系。

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左側はファッション系。

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正面左側の暖簾は新作の“秋色のれん”。顔料染めです。

右手前の紬反物は、左が天蚕糸入りの焦げ茶地。
右は節の多い赤城糸を使った黄土無地。

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秋冬のメインは何と言っても獣毛の糸を使った巻き物です。
カシミヤ・キャメル・ヤクのマフラーやストールが並びます。

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この季節定番の“カシミヤネックウェア(ミニマフラー)”

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中央は“蓮糸のストール”
左は藍と栗で染めた“カディー綿糸”のストール。

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中央のアイランドはテーブルマットのコーナーです。

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“リネンマット”は季節に関係なく使える便利な敷物。

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受注生産の“ランチョンマット”の提案です。(35×50㎝)

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幅20㎝、長さ60㎝、90㎝、120㎝の“テーブルランナー”たち。

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“角帯”は久々の出品です。
手前の二本は新作の綾織りの角帯。黄八丈の織り柄を写しました。
奥の二本は裏表柄違いのリバーシブルの角帯です。

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皆様のお越しをお待ちしています。


# by kageyama_kobo | 2023-11-25 10:07 | 発表の場