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機織り職人の仕事場から…

teorimono.exblog.jp

小管考

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紬の反物を織る時、杼の中の小管の糸が少なくなってくると管の回転の抵抗で緯糸が必要以上に引っ張られることがいつも気になっていました。管の糸が終わり、糸が一杯に巻かれた新しい管に交換すると今度は急に抵抗がなくなるので緯糸の張りがゆるみ織り幅にも影響が出てしまいます。

そんなことを考えていたある日、織物をしている知人との会話の中でこの小管の事が話題に上りました。お互いにどんな小管を使っているのかという話になった時、その人は私よりもはるかに小さい管を使っていると言うのです。その瞬間、頭の中で「そうだ!小さい管をつくろう!」という思いが閃きました。
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写真下方の三本が一般的な小管です。左から“鼓管”“玉管”“竹管”で、これらは全長が7.5~8センチほどあります。私は今まで何の疑いもなくこの長さの小管を使ってきたのですが、今ではこのサイズに不満を感じるようになったのです。それで新たに作ったのが全長を二割ほど縮めた6センチの管です。
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写真上の管が今まで使っていた小管で、下の管が今回新たに作った小管です。管の形状が糸の出具合に及ぼす影響の原因のひとつが管の糸が少なくなってきた時に管の脇の方から糸が出ると、杼の糸口に向かって鋭角に糸が解けてくる事による摩擦です。写真の上は管が長い場合で、ご覧のように糸が引き出されれば管の回転に抵抗が生じるのは容易に想像できます。下の管は全長が短いために引き出される糸は糸口に対して直角に近い角度で引かれるため、抵抗は最小限に抑えられます。
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もう一つの原因は管の重さにあります。写真の左の二本は今まで使っていた管で、右の二本が新たに作った物です。今まで使っていた管は糸巻き機のツムに刺した時に割れにくいように肉厚の竹を選んで使っていました。そして今回作った管は割れ止めの鉢巻を巻いたので肉の薄い竹が使えました。全長で約2割短くなった上に更に薄い素材を使う事ができたお陰で管の重さは約半分まで軽量化することが出来たのです。

この管を使っての織り心地はというと、糸を一杯に巻いた状態では戸惑ってしまうほど軽やかに糸が解けてきて、指をそっと管に当てないと緯糸に弛みが出てしまうほどです。そして糸が残りわずかになった時にも軽やかな抵抗感はあるものの気持ちよく糸が解けてくれ、今まで感じていたストレスは全て解消されました。
by kageyama_kobo | 2013-01-25 20:37 | 道具の話