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機織り職人の仕事場から…

teorimono.exblog.jp

カセを作る+糸の長さを測る

織物の仕事をしていると糸をカセにしなければならない事が多々あります。
(カセとは糸を下の写真の青い糸のように輪のような状態にした物です)

例えばコーンチーズなど棒に巻かれた糸を染色する時、糸を一旦カセの状態にしないと作業が出来ません。
また、手持ちの糸のカセが大きすぎて染色や糊付けがムラになってしまいそうな時には、
糸を小さなカセに揚げなおして使いたいこともあります。

太さの表示のない糸を手に入れた時、その糸の番手デニールを知るためには糸の長さと重さを測る必要があります。
そんな時、我が家では写真のような道具を使います。

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この道具は、かつて地元の製糸工場で製糸した絹糸の太さを測るために使われた検尺機という道具です。
父が言うには「多分、大正時代のものだろう」との事でした。
(後に機械の下面に“明治三十七年新調”という文字を発見)

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全体が木で作られていて、ハンドルの部分は手の油と摩擦のためアメ色に輝いています。
このハンドルを一周回すと糸を巻き取る部分の木の枠は2.5周回ります。そしてこの木の枠は一周が1.3mあります。
従って、このハンドルを40周回すと(40周×2.5倍×1.3m)全長130mのカセが出来上がります。

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正面にあるメーターは実際に糸が巻かれる木の枠の回転数を表わします。
下が100回計で上が400回計です。ハンドルを40周回すと木枠は100周回るので下の竹製の針が一周するのと同時に、
上の黒い針が1/4周回ります。(漢数字で書かれている目盛りが感動的です)

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それだけではありません。このメーターと連動して木枠が100周回るごとにハンマーが作動し
天板に設置されたベルが「チーン」と鳴ります。
計測状況を視覚だけでなく“音”でも知らせてくれるという親切な設計になっています。

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天板が開けられるので中を覗いてみるとご覧の通り、これらの仕掛けはすべて木製の歯車の回転によって作動している事がわかります。

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放置されていた期間があったのか、四本の足のうちの一本はこのように激しく虫に食われています。(現在では虫はいないようです)

今から100年以上前の時代にこのような精巧な仕掛けが考え出されて人間の手で作られました。
現代の工業製品の中で今後100年使い続ける事の出来るものがいくつあるでしょうか。

この事を考える時、この機械が今でも現役で働いているということに改めて驚かされます。


by kageyama_kobo | 2008-12-24 01:53 | 道具の話