機織り職人の仕事場から…

新柄のれん“松煙ダイア”

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生成り地に松煙染めの絣で麻のれんを織り始めました。織り始めは白地にグレーの棒縞なので囚人服かパジャマ地のような柄に見えましたが、柄が絣に差し掛かると雰囲気が一変します。

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絣に染めた二種類の経縞をずらして柄を織り出します。絣の重なりで白とネズの菱形模様が浮かび上がります。

この大きなずらしの経絣は父と二人で開発した我が家独特の技法です。



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# by kageyama_kobo | 2016-11-17 20:01 | 色があり柄があり…

久しぶりの“蓮糸のストール”

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久しぶりに“蓮糸のストール”を織り始めました。記録を調べたら前回織ったのは6年も前でした。

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私の織る蓮糸のストールは蓮糸と絹糸を50%:50%で使います。写真に見える生成り色の糸が蓮糸で、濃い色(濃いオリーブグリーン)の糸が絹糸です。そして今回使う蓮糸は今までで一番細く、絹糸の太さに換算すると480デニールです。

この蓮糸と組み合わせるために絹糸を特注しました。
糸屋に注文の電話をしたところ300デニールの座繰りの玉糸があるというのです。そこでこの糸を2本合わせて片撚りとし、600デニールの糸を作ってもらいました。絹糸は精練すると約80%に目減りするので600デニール×0.8=480デニールとちょうど同じ太さになります。

蓮糸にも玉糸にも自然なスラブ(糸に太い細いの変化)があって“糸味たっぷり”の布になりました。織り上げた後、糊落としをすると蓮糸と絹糸の風合いが混ざり合ったとても魅力的な布に仕上がるはずです。

このストールは次の作品展(静岡市・亀山画廊 12/1~13)でお披露目する予定です。











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# by kageyama_kobo | 2016-10-11 23:16 | 色があり柄があり…

男の黒紬を湯通し…音で分かる布の良しあし

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天気予報をにらみながら昨夜遅く“男の黒紬”の糊落としを行いました。そして今朝、長い雨が続いた後の久しぶりの朝日。湯通しには絶好の薄曇りの空のもと、糊落としを終えた反物を丁寧に水洗し庭に引っ張って伸子を掛けます。

通常は水洗の終わった反物は軽く脱水機にかけてから庭に引っ張ります。しかし黒など濃色の反物は水が滴るくらいの状態で引っ張ります。太陽の熱を吸収しやすい濃色の布は乾燥が早く、水をたっぷり含ませておかないと伸子を掛け終わる前に乾いてしまうからです。

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反物が庭に張れたら伸子掛けです。布が乾く前に終われるよう大急ぎです。竹ひごの両端に短い針のついたものが伸子で、この針を反物の両耳の約1ミリ辺りに刺します。

生地に針を刺す時に“プツッ”と音がします。紺屋に生まれて若い頃から数えきれないほど湯通しをしてきた母が「この“プツッ”て音がしなかったら上等な生地じゃないよ!」とよく話していました。筬の打ち込みの甘い生地はこの音がしないのです。

今回もこの“プツッ”が聞こえて一安心でした。




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# by kageyama_kobo | 2016-10-04 13:23 | 仕事場の風景

男の黒紬…黒糸を織るための工夫


人間は年齢と共に体の機能がじわじわと衰えてきます。私がその事を実感したのは45歳の頃でした。本やパンフレットの小さな文字が滲んで見えてくる事を知人の眼鏡屋に話したら、「それが老眼だよ!」と一言。そしてその場で老眼鏡を注文したのは言うまでもありません。

その頃からでしょうか、私は細くて濃い色の糸を経糸に使用する時に必ず使う道具があります。

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赤い矢印の先にあるのがその道具で、素材は白い発泡スチロールです。自分の足や綜絖など動く部分と干渉しないよう、そして機にはめ込むようにカットしてあるので、わずかな固定器具で取り付けられます。

左側は織り際が良く見えるよう、そして右側は綜絖と綾棒の間の糸の状態を確認するためのものです。

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この白い背景があることで濃い色の経糸の状態が良く把握でき、特に今回使用している節の多い糸などはこれがあることで綜絖周辺の経糸の節や枝糸をいち早く発見することが可能になります。

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ご覧のように白い背景に黒い糸がくっきりと見えるので経糸が切れてもすぐに発見でき、傷を織る前に手直しが可能となります。

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他の糸に絡んだり綜絖に引っかかったりする枝糸は、早めの発見と対応で作業時間のロスを軽減できます。

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もう一つ老眼対策として行ったのが作業エリアの照明の充実です。天井に取り付けたスポットライトはLED電球なので発熱も少なく、コンパクトであることが気に入っています。スイッチは機に座った状態で手が届く所に取り付けてあります。


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ライトの光軸は綜絖と間丁の間の綾棒周辺に合わせてあります。細い経糸が切れた場合、この辺りでつなぎ直すことが多いからです。

織りの作業の中で理由の分からないストレスを感じるようになったら、照明を改善してみることをお勧めします。きっとかなりの確率でストレスが軽減されると思いますよ。

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# by kageyama_kobo | 2016-09-30 02:17 | 道具の話

男の黒紬…節糸を活かす布づくり

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我が家ではもう50年以上も前から“紬”の反物や帯を織ってきました。“紬”とは蚕の繭を真綿にし、この真綿から紡ぎ出した糸のことを言います。一本の糸の中に太い所や細い所のある紬糸は、布に織ることでその太さのムラと糸の膨らみが独特の風合いを生みます。この“紬糸”を経糸または横糸もしくは両方に使用して織られた生地を“紬”と呼びます。
幼い頃からこの布が身近にあった私は、今でもまっすぐで綺麗な糸よりもデコボコのある(節のある)糸がお気に入りです。

ある時知人から国産の蚕(ぐんま200)の繭を譲り受けました。私自身が糸を作れる訳ではないので、以前より交友があり群馬県で養蚕から座繰り製糸までを一貫して行っている東宣江さんに糸に引いていただくことを依頼しました。

「節のある糸を使いたいので、できたら玉糸で…」とお願いして出来上がってきた糸をこの度やっと機に掛けることが出来ました。今回は糸の節を活かした反物を織りたかったので、思ったより節がおとなしく感じたこの玉糸に6パーセントほど紬糸を混ぜて経糸としました。(写真でグレーに見えるのが“紬糸”です)

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「思ったよりも節がおとなしかった」と感じた座繰りの玉糸でしたが、いざ整経し機に掛けてみるとなかなかのじゃじゃ馬です。ご覧のように人間の髪に例えると“枝毛”のような遊び糸が沢山あり、この糸が絡んで紬糸の細い部分(髪の毛より細い部分もある)が頻繁に切れるのです。

以前にもこのような事があり経糸に糊をスプレーしながら織った事があったのですが、やはり初めて使う糸は予想がつかないため見た目の判断だけでは上手くいかないことがたびたびあります。今回は何とかこのまま織り上げようと思っていますが、次回からはこの遊び糸を抑えるためもっと強い糊を付けます。

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ここ10年ほど“糸味を活かす布づくり”を意識して布を織っています。今回の反物もその一つで、色もなければ柄もなく“糸味”のみで布を表現する“黒無地”です。男性用の羽織地に使っていただけたらと“男の黒紬”と名付けました。写真でお分かりのように玉糸や紬糸の太さのムラが布の表面に不規則に現れる“節糸独特”の表情となりました。

“枝糸が絡んで紬糸が切れる”事ですが、これは決してデメリットだけではありません。これほどに枝糸がある経糸で織られた生地は、糊を落とし砧打ちで仕上げた後に何とも言えなく心地よい“滑り感”が生まれます。この手触りこそが扱いにくい節糸を苦労して織り上げた人にのみに与えられるご褒美だと感じています。

私は長い間機械製糸で作られた玉糸を経糸に使ってきましたが、この“滑り感のある手触り”は座繰りという人間の手で引かれた糸でしか感じる事の出来ない独特のものです。できる事なら一人でも多くの紬を織る人・紬の着物を身にまとう人にこの感触を体感していただきたいと思っています。



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# by kageyama_kobo | 2016-09-23 01:36 | 染めと織りの素材