機織り職人の仕事場から…

蓮の糸を織る…最も重要な工程

f0175143_9321777.jpg蓮の糸100%で織る服地。いよいよ本番が始まりました。
経糸は整経長6m・糸数1400本、総延長は8400mにもなります。

糊付けの終わった糸を整経するために木枠に巻き取るのですが、この時点で今後糸のトラブルにつながる要素をすべて取り除かなくてはなりません。

なぜなら機にセットした経糸にはテンションがかかっているため、節や結びこぶを取り除いたり糸を結びなおしたりの作業がとてもやりにくくなるからです。

f0175143_9345297.jpg木枠を巻く座車のハンドルを右手でゆっくり回し、左手の親指と人差し指に神経を集中して糸の節や結びこぶを探します。

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となりの糸に絡みつきそうな遊び糸や筬に引っかかりそうな大きな結びこぶ・ゴミ・節などを丁寧に取り除いておくことで織りの作業が快適にでき、さらに織り上がった布もきれいに仕上がります。

f0175143_9364197.jpg取り外した節糸や切り取った結びこぶなどが半日でこんなに足元に溜まります。

f0175143_9365865.jpg経糸の本数が多いので今回は3回に分けて整経をします。

昨日の朝から夜までかかって全体の1/3の経糸を木枠に巻き整経まで行いました。すべての経糸の整経が完了するのにはあと二日必要です。




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# by kageyama_kobo | 2016-08-19 10:01 | 染めと織りの素材

仕事場に新しい機が仲間入り

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我が家の仕事場に織り幅90センチの機が仲間入りしました。以前から広幅の機は欲しかったのですが、これを置くと仕事場が狭くなる事からためらっていたのです。しかし、この度服地の注文を受けた事をきっかけに導入を決心しました。

この機は知人宅で何年も使われていなかったものです。金属部分に錆が出たり、今まで使っていた機とは構造が違い私には使いにくい部分が何か所かあったため、お盆休み返上で機の改造に取り組みました。

仕事場が狭くなる事への対策として、この機を使っている間はいつも使っている機は解体して仕事場の隅っこで休憩してもらうことにしました。
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まず最初に行ったのは踏み木の取り付けです。機に座ると向こう側に根元のあった取り付け部分を固定器具を新調して手前のかかとの位置に付け替えました。
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その踏み木には、綜絖から降ろしてきた紐が結ばれるのですが、この紐の位置が使っている最中にに移動しないよう溝を刻みました。
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長い間放置されていたろくろの軸は錆び付いて動きが悪かったため、サンドペーパーで錆を取り除き蝋を塗って動きを滑らかにします。手で回すと軽やかにクルクル回るくらいが理想です。
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長さ90センチの筬が入る筬塚ですが素材の所為か大きさの割りに重さが足りないように感じました。そこで、ストックしておいたケヤキの板をウエイトとして取り付け筬塚を重くしました。
緯糸をしっかり打ち込む私の織り方には軽い筬塚は向いていません。我が家では昔から鉄の棒や硬い木を筬塚に取り付けて、軽い力でもしっかり筬が打ち込めるようにしています。
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筬塚の高さを調節する部分です。改良前はヒモを掛けるギザギザの背側に幅広の板を取り付け、機織りの最中に筬塚から手を離すと筬が自然に織り際から離れるような仕掛けになっているのですが、私にはこの吊り方は使いにくいので背側の板を薄くしました。
こうする事で経糸を最後の最後まで織りつめるのに有利になります。
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筬塚の前後の位置を決める溝が使いたい部分に無かったため、ここに新たに細かく溝を刻みました。筬塚の位置は織る時の姿勢に大きく影響するため、細かく調整できるようにしたかったのです。
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菊を固定する棒を上方に引っ張るためのバネが錆びていました。私はこのバネの感触が嫌いなので、代わりに分銅を使って棒を引っ張るように変更しました。

私は自分の使う道具は常にベストコンディションを維持できるよう心掛けます。ストレスのない仕事環境はいい布を織るための絶対必要条件だと考えます。
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# by kageyama_kobo | 2016-08-14 01:23 | 道具の話

蓮の糸100%の布

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蓮の糸100%で織る布の注文が入りました。今回の依頼は服地です。
初めて使う糸ということで、まずは糸の太さを確認しながら筬を選び試し織りをします。
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手紡ぎの糸なのでご覧のように太さは不規則です。引っ張り強度が弱い上に毛羽があったり抜け切れしやすかったりとかなり曲者の糸です。従って織りながらも経糸はよく切れます。切れたら糸の細い部分でつないで結びコブが筬に掛からないように気を使います。
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織り上がった部分は自然の生成り色が重なり合って独特の色合いです。

機から降ろしたら糊落しをして、最終的に風合いの確認をします。
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# by kageyama_kobo | 2016-08-06 23:16 | 染めと織りの素材

影山秀雄 織りもの展 手機で織る藍の布

f0175143_2272139.jpg八ヶ岳倶楽部の作品展が7月7日より始まりました。私は片道1時間45分の道のりを毎日車で通っています。

早速ブログにアップしようと思っていたのですが、初日にギャラリーにカメラを忘れ、2日目は雑用に時間を取られて入力する時間がなく、3日目以降は連日の立ち仕事と往復200キロの運転の疲れがたまって集中力ゼロ…という事で、皆様へのお知らせは週が明けた今日になってしまいました。

f0175143_227516.jpg今回のテーマは“藍の布”。そこで、入り口正面には我が家で30年間織り続けている藍と生成りを基調とした卓布のコーナーを設けました

f0175143_2281039.jpg窓際には、これも定番の“麻のれん”を吊りました。

少し開けた窓から入る風にゆったりと揺れる様子が展示に動きを与えて何とも嬉しいです。

藍色に透けて見える森の緑はこの会場ならではのもの。

f0175143_2282836.jpg壁面には今の季節に似合う浅葱と生成りを基調とした模紗織りの大きなタピストリー。

f0175143_229194.jpg八ヶ岳倶楽部での作品展は今回で3回目。ここでは初めての紬の反物と帯も並びます。

f0175143_2291818.jpg手触りの優しい手紡ぎ木綿のマフラーやストールのコーナー。

f0175143_2294353.jpgこちらはカシミヤ。「夏なのにカシミヤ?」と思われるでしょうが、小さなネックウェアは冷房対策にも重宝なアイテムです。

今回のために新柄を11種類追加しました。

f0175143_2210217.jpg季節柄さらっとした感触の麻のマットが欲しくて、こちらも新作を展示しました。

f0175143_22104072.jpg足の裏が喜ぶジュートマットは夏の玄関マットやバスマットとしていつも人気者です。

f0175143_2211498.jpg八ヶ岳倶楽部は平日といえども常にどこかにお客様の姿があります。ショッピングや食事、そして何よりもこの森の散策を楽しまれています。

私の会期は残すところあと2日。

標高1360mの高原の空気を胸一杯吸いに来て下さい。
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# by kageyama_kobo | 2016-07-11 22:51 | 発表の場

影山秀雄 織りもの展 “手機で織る藍の布”

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今年最初の作品展は二年ぶり三回目の八ヶ岳倶楽部です。展示会場は“ステージ”と呼ばれる緑の森の中の建物で、天気が良ければ初夏の風が吹き抜けるとても気持ちのいい場所です。

今回は“藍の布”をテーマに行います。
工房の染め小屋には私の祖父と伯父(紺屋職人)が使った藍甕があり、この甕で北海道産の蒅を原料に藍を建てます。“藍”という染料は木綿や麻と相性が良く、上手く建てた藍甕からは鮮やかさと暖かさの感じられる青色を染めることができます。

染め上げたばかりの藍には鮮やかさと力強さがあります。キリッとした青は化学染料が発達する前の時代には我々の身にまとう衣類に最も多く使われてきました。色が氾濫する現代にあってもこの“藍の色”が魅力的に感じられるのは、藍の布を身にまとっていた時代の日本人のDNAがいまだに我々の体の中に引き継がれているからなのだと思います。

“藍染めの布”の魅力は使いながら変化していく色と風合いにあると考えています。
使い始めの藍の布には染料によって繊維が締るため“硬さ”や“張り”が感じられます。しかし使い続け洗い続けていくうちに繊維がほぐれ、布の素材本来の風合いが出てきます。

“洗濯”も藍の色を変化させる大きな要素です。水をくぐるたびに藍の中に含まれる“アク”が抜けていきます。洗液には茶色いアクが溶け出し、洗われた布の青色はその度に澄んでいきます。
洗う度に色褪せながらもはきやすく愛着の湧いてくるブルージーンズの青は、自然の藍の色を科学的に合成して作られたもの・・・とお話しすると分かっていただけると思います。

藍の色を活かした布は私のところの定番の製品で、のれん・タピストリー・テーブルマット・コースターなどを中心に展示します。
それ以外にもカシミヤのミニマフラー、ヤクのマフラー、与那国蚕のマフラーなど今まで工房で織り続けてきた製品の新作が並びます。
さらにはこの会場では初めて、我が工房の本来の仕事である“紬の反物と帯”もご覧いただきます。

会場には毎日私がいます。梅雨の終わりの頃、高原の気持ちのいい空気を吸いにお出かけください。

お待ちしています。
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# by kageyama_kobo | 2016-06-23 09:53 | 発表の場