機織り職人の仕事場から…

糸を絞る(絞り台)

f0175143_22291084.jpgこの度の改装工事では染め場も一新しました。そしてかねてから計画していた絞り台を新調しました。

写真は以前使っていた絞り台です。地面から二本の柱を立ち上げ、この柱を支えに丸太の横棒を渡すオーソドックスな構造です。

f0175143_22292929.jpgこちらが新たに作った絞り台。支柱は一本で横棒は片方のみ固定されています。

この構造は、以前にインドの染織を訪ねる旅で見学した織物の村の染め場で発見しました。染物小屋の太い柱に横棒ががっしりと差し込んであり、染物職人がこの棒に糸を引っ掛けては手際よく絞っていた姿が印象的でした。

この光景を見た時から「いつか我が家にもこの絞り棒を!」と考えていたのです。

f0175143_22294798.jpg二本支柱の絞り台は糸の掛け外しの度に横棒を持ち上げなくてはならないのに対し、片側固定の絞り台は一方が空いているので糸の掛け外しがとても速やかにできるのが最大の利点です。

空いている側は糸がずり落ちないようにストッパーを付けました。

この横棒は60ミリの太さのステンレス製で、鉄工場をやっている友人のお兄さんに特注で作ってもらいました。

f0175143_2230321.jpg支柱は線路の枕木で、水に強い栗の木です。太さも十分あり、二本のボルトで締め上げることで横棒をしっかりと支えてくれます。


f0175143_22302056.jpg横棒の高さは私の体格に合わせて床から88㎝。そして支柱は地面に60㎝ほど埋め込み、コンクリートで固定しています。

写真のような太い麻紐のカセをガンガンさばいてもがっしりと受け止めてくれます。

f0175143_22303544.jpg糸を絞った時に水が落ちる下の部分には石ころを並べました。落ちた水が周りに飛び散るのをかなり防げます。

f0175143_22305219.jpg使わない時は二本のボルトを緩めて横棒を簡単に取り外す事ができます。

写真のようにコンパクトに格納でき、狭い染め場が有効に使えます。



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# by kageyama_kobo | 2016-04-12 23:40 | 道具の話

機の上のスポットライト

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機に経糸がかかった3月31日、いよいよ新しい工房が稼働を始めました。およそ10ケ月ぶりの機の感触に最初は少々戸惑いながら、それでも40年近く使い慣れた機ですからすぐに感覚が戻ってきました。
新しい部屋に古い道具。以前とは大きく変わった雰囲気の仕事場で筬を打つ感触が気持ちいいです。
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最初に機にかけたのは、昨年から依頼されていた手紡ぎの木綿糸の白生地です。不規則な太さの糸なので、織っていると時々経糸が切れる事があります。

手織りの場合、経糸が切れると新しい糸をつなぎ足して写真のように織り手前にマチ針で止めるのが普通です。しかし私はこの方法は好きではありません。一番の理由は、この方法では経糸がこの場所で必ず切れている(つがなりが切れる)ので、それが何とも気持ち悪いのです。布の強度的には全く問題ないのですが“経糸は最初から最後まで、たとえ結び目があろうともつながっていて欲しい”のです。それと、もう一つの理由は“マチ針の刺さった織り手前は醜い”と感じるからです。たとえ誰が見ていなくても綺麗(無駄なものが無い状態)に仕事をしたいと思います。

そこで私は経糸が切れると、切れた所で結び合わせます。結び合わせた後の経糸のテンションに張りや弛みが無いように糸の張り加減を調整しながら結びます。

太い経糸の場合は問題ないのですが、例えば紬の反物の、それも経糸に紬糸を使った場合には結ぶ糸の太さは時に髪の毛ほどの細さになることもしばしばです。このような糸を結ぶ場合に最も重要な事は“糸がちゃんと見えている”事です。
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私は45歳の時に初めて老眼鏡を作りました。その後もこの目はたゆまぬ進化を続けて今日に至っています。そのため年を追うごとに細い糸の扱いがだんだん大変になってきて、現在では機に座る時は老眼鏡が手離せない状態です。

しかし細い糸を結ぶ時だけはどんなに目に合った老眼鏡をかけてもそれだけでは不十分です。そうです、明るい“照明”が不可欠なのです。この二つが揃って初めて“糸がちゃんと見えている”状況を作り出すことができます。

そこで新しい工房では切れた経糸を結ぶ時のために機の上に写真のようなスポットライトを取り付けました。
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機の上で経糸をつなぐ場所は“織り際から間丁まで”です。そこで照明はこの範囲を明るく照らすように調整します。この照明+通常よりも度を強めに作った老眼鏡で、どんなに細い経糸でも機の上で結ぶことができるようになりました。

私と同じ思いをされている方は多いのではないでしょうか。 ご参考までに・・・。
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# by kageyama_kobo | 2016-04-07 21:51 | 道具の話

床に開けた穴

f0175143_236479.jpgこの度改装した新しい仕事場には、床に40㎝×60㎝ほどの穴が開けてあります。一見すると台所などに見られる“床下収納庫”のようにも見えますが、実はそうではありません。

普段はご覧のように蓋をして床として使えます。そして、ある仕事をする時にこの蓋を開けるのです。

f0175143_2381245.jpg穴の深さは約40㎝ほどで、この部分は箱になっています。この箱を引き上げるとぽっかりと穴が開いて床下の点検のための出入り口にもなります。

f0175143_2383780.jpg本当の使い方はご覧のとおり。

最近になって管巻きの時に床にあぐらをかいたり正座をすると膝に痛みを感じるようになりました。

特に経糸を大管に巻く時は長時間座り続けなくてはならないのが辛かったのです。

そこで椅子に座る体制ならば膝に負担が少なく管巻きの作業が楽になると思い、この穴の事を思いついたのです。

結果は大成功で、大管巻きがとても楽になりました。

私は今年還暦を迎えました。そこで、来たるべき自身の高齢化に備えて新しい仕事場にはこのような“老体に優しい工夫”を随所にちりばめてあります。

他所に預けてあった仕事道具もすべて仕事場に納まり、棚や吊り金具の取り付けもほぼ終わって、先週10ケ月振りに機織りの仕事が再開できるようになりました。あれこれと工夫を凝らした仕事場が予想通りしっかりと機能してくれるのかを確認しながらの再出発です。

工夫の成果が出ましたら、また紹介していきたいと思っています。
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# by kageyama_kobo | 2016-03-31 23:54 | 仕事場の風景

着々と、粛々と ・・・

 新しい工房では機も組み上がり、やっと織物工房の雰囲気が出てきました。床面積は変わらないのですが、以前あった段差を無くしてフルフラットな床にしたため、部屋全体がかなり広くなったように感じます。
 その床の広さを活かすよう、いろいろある道具たちをとにかく壁に収納する工夫をしています。
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写真は60センチ幅の筬が使える筬塚です。普段は44センチ幅の筬塚を使うのですが私の仕事ではこの二つを結構使い分けるので、どちらの筬塚も掛けられるフックを壁に取り付けました。以前は仕事場の隅の床に置いておいたのでいつもホコリだらけでしたが、これからは綺麗に使ってあげられます。
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 我が家には3台の糸車がありました。しかし置き場所の都合で以前は2台しか出しておけませんでした。新しい工房では糸車を使わない時は壁に掛けられるようにしました。これなら場所を取らないので3台の糸車を糸の種類に応じて使い分けることができます。
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 巻き筬を通す時に使う“巻き筬台”も置き場所に苦労しました。けっこう使用頻度が高いので手元に置いておきたい道具です。今回は広幅用(60センチ)と小幅用(44センチ)を一緒に収納することでスペースを稼ぎました。

f0175143_2126717.jpg 我が家の整経台は長さが2.7メートルあります。これだけの大きさの木枠が仕事場にドンと収まっているとかなりの場所を塞がれてしまうのがとても不満でした。そこでこの度のリフォームを機会に大工に頼んで新しく作り直しました。5センチ角のヒノキ材を使ってオイル仕上げをしたかなり贅沢な道具です。

f0175143_21265063.jpg 一緒に使う“大管立て”も併せて、使わない時はご覧のように壁に収まる構造にしてあります。たったこれだけの事ですが、空間の広さはずいぶんと確保できたように感じられます。

 早く機に座って仕事を始めたいのですが、仕事場の準備をしながらこんなことを考えては木を切ったり削ったり、そして年度末の雑用も相まってなかなかその日が見えてきません。それでも、気持ちよく仕事ができる事を想いながら体を動かす毎日が楽しいです。


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# by kageyama_kobo | 2016-03-11 22:24 | 道具の話

いよいよ、始動!

皆様、お久しぶりです。

昨年6月から始まった工房・自宅の改修工事がようやく完了しました。
とは言え現段階では器ができただけで中身はまだこれから。仕事の道具を配置するための棚やフックを取り付けたり、道具類をすぐに使えるように配置したりしなければならず、実際に仕事にかかるまでにはまだしばらくかかりそうです。
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それでも早く機に触りたいという気持ちから預けてあった機を工房に持ち込み、今日はその大掃除を行いました。

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私の使う機は我が家で50年近く使い続けてきたもので表面には長年の埃がこびりついてかなりの汚れ様でした。重曹で磨き上げるとさっぱりとした木の表情になりました。

明日はこの機を組み立てて、仕事を始動する気持ちを盛り上げたいと思っています。
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# by kageyama_kobo | 2016-03-03 01:31 | 仕事場の風景