機織り職人の仕事場から…

経糸(たていと)の準備

      機にセットする経糸(たていと)を準備する工程を“千切り巻き”といいます。その前工程として、千切りに巻きつける
      経糸を必要な巾と密度に整えるために、筬(おさ)という櫛のような道具に経糸を通す工程があり、これを巻き筬
      通しと呼びます。
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      我が家ではこの作業の時に筬とアゼ竹を固定するように専用の台を作りました。特に名前はありませんが
      “巻き筬通し台”とでも呼びましょうか。
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      この竹の羽(は)が整然と並んだ道具が筬(おさ)です。現在では国内でこの竹製の筬を作る職人はいなくなって
      しまったと聞いていますが、我が家では父が創業当時に買い揃えた竹筬が今でも現役で働いています。
      現在では織り筬はステンレス製の物を使いますが、千切り巻きに使う巻き筬は軽い竹筬が使いやすいです。
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        千切り巻きの作業は経糸を長く伸ばす必要があるので、我が家の狭い廊下を目一杯使って行います。
        腰を曲げて千切りを膝小僧で押さえながらの作業は、織物の工程の中でも一番体にこたえる仕事です。 
      
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# by kageyama_kobo | 2008-06-17 13:10 | 道具の話

緯糸(よこいと)用の小さな管“小管(こくだ)”

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      機を織る時、杼(ひ)の中に緯糸(よこいと)を巻き貯めておくための小さな管を“小管(こくだ)”と呼びます。

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      現在では写真右側の鼓型や中央の玉管のように両脇の糸の崩れを防げるものも手に入りますが、我が家では
      以前には写真左側のただの竹の棒を小管として使っていました。

      家から少し離れたところにある小川の畔の篠竹の藪に行き、細い竹を選んで切ってきます。
      節を避けた場所に出刃包丁(なぜかこれが一番使いやすい)の刃を当てて上から軽く押さえながらゴロゴロと
      前後に転がすと、刃がだんだん竹にくい込んで、切り口にささくれのないきれいな管を切り出すことが出来ます。

      滑りやすい絹糸やふんわりと巻かれたウールなどは別ですが、紬糸や木綿の単糸など崩れにくい糸を使い着尺
      などを織る場合の小管に求められる機能は、杼の中で軽く回転してくれるということです。そういう意味では、この
      細竹を切っただけの小管が最も理想的な道具かもしれません。
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# by kageyama_kobo | 2008-06-16 20:08 | 道具の話

糸染めの仕事

      我が家の糸染めは、藍染め以外はほとんどこの“へっつい”で行います。
      父の時代には薪を燃料に使い、かまどに残った灰は水に入れて灰汁(あく)を作り、この灰汁で絹糸の精錬をしたと
      聞かされています。
      その後、灯油からガスへと燃料は変わりましたが、本体のへっついは55年間変わらず働き続けてくれています。
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      写真は絹糸を染める前に熱湯で煮ているところです。
      一本の竹の棒を使って余裕を持って扱える糸の量は、私の場合絹糸で500g~600gくらいまでで、それ以上の糸を
      染める場合には竹の棒を2本(↓)使います。
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        それでも、この釜の大きさ(染液15リットル)でムラ無く染めるのには糸量は1kgが限度でしょう。
        糸を繰る竹の棒は、染める色に合わせて赤用、青用、茶色用、黒用の4種類を使い分けます。
        (写真はまだ染める前なので、精錬用の色の付いていないものを使っています)
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# by kageyama_kobo | 2008-06-13 23:15 | 道具の話

染め場の色見本

      紬の反物の注文を受けたとき、まず最初にやることは見本布の緯糸(よこいと)を10段ほどほどくことです。
      ほどいた糸は指に巻きつけて結び、これから染める緯糸の色見本になります。
      糸染めが始まると染めている糸と色見本を時々付き合わせて、同じ色になるまで何回も染料を加えては
      染め重ねていくのです。
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      こんな風にして出来た小さな色見本が、長い間にこんなに沢山たまってしまいました。
      新しい柄をデザインするとき、この色見本をあれこれと並べ替えていると、不思議とアイデアが浮かんできます。
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      今となっては我が家に無くてはならない貴重なデータベースです。
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# by kageyama_kobo | 2008-06-12 23:07 | 色があり柄があり…

足癖

      私が現在使っている織機(しょっき)が我が家に来てからかれこれ40年が経ちます。
      始めは父が使っていたものを私が引き継いだのです。
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      織機の踏み木がまっすぐ上下するためのガイドの部分を『鳥居(とりい)』と呼びます。
      私の織機の鳥居の縦棒はご覧のとおり、足癖の悪さからか見事に磨り減っています。
      あまり減らないようにと時々ロウソクをこすり付けて滑りがよくなるように手入れをしているのですが、
      それでも40年間使い続けていたらこのようになってしまいました。

      何年後か、この部分がキョウギのように薄くなって破れてしまう日が来るのかと、鳥居を見るたびに想像しています。

      私の織機の右横に並んで母が使う織機があります。
      ほぼ同じ時期に我が家に来た同じ型の織機ですが、こちらの鳥居は棒の磨耗も少なくきれいな姿をしています。
      きっと母は足癖がいいのでしょう。
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# by kageyama_kobo | 2008-06-10 15:53 | 仕事場の風景