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機織り職人の仕事場から…

千巻にお腹を着ける派? 着けない派?

私が開いた織物の講座で参加者に「機を織る時に、千巻の部分にお腹を着けますか?」と質問をしました。
そうしたら半数以上の方が「着けます」と答えました。
「その理由は?」と尋ねると「体が安定するから」もしくは「そう教わったから」との事でした。

私が職業として織物を始めた20代の頃、多分私も千巻にお腹を着けて織っていたと思います。
ある時、反物を一反織り終えて機から生地を外した時、生地の真ん中にスーッと一本筋が付いていました。
「しまった! 傷を織ってしまった!」と驚くのと同時に、その原因を考えました。

理由はすぐに分かりました。私のベルトのバックルが織っている間中生地に当たっていたのでした。

幸いにもこの筋は擦れて出来たもので、湯通しをする事で消えてくれたので事無きを得ました。
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この出来事以来、私はお腹を千巻に着けない事を心がけて機を織っています

それでもある時、織り上げた布に青い汚れが付いていた事がありました。
自分では離していたつもりでしたが、履いていたジーンズがわずかに生地に触っていたのです。

そこでこの部分が確実にズボンやベルトのバックルに触れない方法を考えました。
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ご覧のように布を一枚、織り前に掛けておくのです。
これで織り上がった生地がお腹と接触する事はなくなりました。

更には夏の暑い季節にうっかり汗を落としてしまっても、生地を汚すことを防げます。
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私はこの布を2枚持っています。どちらも着古しのジーパンです。
一枚は普通のブルージーンズ(右)で、もう一枚はブリーチしたジーンズ(左)です。

理由は、写真をご覧いただければ一目瞭然。
織っている緯糸の色が濃かったらブリーチジーンズを、
薄色の緯糸を使っている時はブルージーンズを使います。

これで、細い紬糸がグッと見やすくなり、作業効率が上がります。
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どちらの布にも着古したコールテンのシャツの背中の部分を切り取って裏地として張ってあります。
コールテンの生地は毛足があるので、機織りの振動で布がずれることがありません。
更には当たりが柔らかいので、下の布との摩擦も軽減されます。

そんな訳で、この布(名前はありません)は今の私には無くてはならない道具となっています。





# by kageyama_kobo | 2021-05-02 21:43 | 道具の話

手機織処 影山工房 織りもの展 in RYU GALLERY

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昨日から、地元富士宮市の RYU GALLERY で作品展が始まりました。
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小ぢんまりとしたギャラリーですが、白壁のシンプルな内装でとても展示が映えます。
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壁面にはのれんやマフラー・ストールなどを…
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こちらはこの冬力を入れて織ったカシミヤ・キャメル・ヤクのストール類。
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窓際にはネックウェアやマット類。
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色々な素材を使ったので、使用した糸も触っていただこうと思い展示しました。
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これからの季節に活躍しそうな手紡ぎの綿糸のマフラー。
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こちらは蓮糸のマフラー。
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生前に父が織った絹のネクタイ。
以前はファンが多かったです。今回久々に登場しました。

その他、綿麻のテーブルマットやコースターなども多数展示しています。

明日以降は 4/3,4/4,4/7,4/10,4/11 に影山が会場にいます。
ご都合が付きましたらお出掛け下さい。







# by kageyama_kobo | 2021-04-01 22:42 | 発表の場

天蚕の繭を手に入れました

以前、群馬県で座繰り繰糸をする東宣江さんのお宅で“天蚕糸の縞の入った布”を見せて頂きました。
その“底光り”のする天蚕糸の光沢にドキッとさせられてしまいました。
そして、この時からこの糸に憧れを抱くようになったのです。

織物屋が糸に憧れるのはいいのですが、これがとにかく高価です。
天蚕と言えばまずは“安曇野市天蚕センター”という事で、行ってみました。

ここで販売していた天蚕の糸が何と、10gで10,000円との事!
それでも私は買いましたよ。何せ憧れですから。
この想いが消えないように、10gだけ…。

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あれから何年もたった最近、何とこの天蚕が私の元にやってきました。
と言っても、向こうから勝手にやってきた訳ではなく
ある方から「これだけあるんだけれどよろしかったらお譲りしますよ」というお話があったのです。

そうは言われても私がこの繭を糸にできる訳ではないので、先にご登場いただいた群馬の東さんに相談しました。
「少量のサンプルがあれば糸に引けるかどうか確認できます」とのお返事をいただき、サンプルを送ってみたところ
「可能です!」とのお言葉をいただきました。これで購入の決心がついたのです。

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届いた繭たちはとても奇麗で、家蚕と比べるとはるかにグラマーです。

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“繭の標本”を作りたくて中のサナギを取り出すことにしました。

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繭をカッターで切り中のサナギを取り出すと、サナギは想像していた以上に大きかったです。

①がカラカラに乾燥したヤママユのサナギ、②は幼虫が繭の中で最後に脱皮した皮
そして③が実際に糸になる繭の部分です。

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ここまで来ると一つの疑問が湧いてきました。この繭のいったい何パーセントが糸になるのかと…

そこでまず、繭2個の重さを計ってみました。5.8gありました。

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次に繭だけを計ってみました。1.1gでした。
という事は、サナギだけで4.7gもあったのです。

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繭の表皮の重さ1.1gを総重量の5.8gで割ると、採取できる繊維のパーセントが分かります。
ご覧の通り、約19%でした。

それも、この19パーセントすべてが糸になる訳ではありません。繰糸の段階でそれなりにロスがあるでしょうから、
最終的にとれる糸量は想像以上に少量になってしまうはずです。

それならば尚更、この糸を活かす使い方を考えなければと想いを巡らす今日この頃なのです。







# by kageyama_kobo | 2021-03-31 00:01 | 染めと織りの素材

この春、二つの作品展

この春、二つの作品展があります。
ちょっとした手違いから会期が重なってしまいましたがそれぞれのコンセプトが重ならなかったので、
どちらにも「Go!サイン」を出しました。

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東大阪市にある上方銀花 ”さんとはお付き合いを始めて28年になります。

今回は出雲市で栗や黒柿などの素材を得意とする“おかや”さんと、
香川県で柔らかなフォルムのガラス食器を制作する“田井将博さんも一緒です。

コロナ禍の中、残念ながら私は会場には行けないのですが、
木と布とガラスがどのような調和を見せてくれるのか、
お近くの方は是非ご覧下さい。



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地元富士宮市にあるRYU GALLERYでの作品展です。

まだ少し肌寒さの残る季節、カシミヤやキャメルなど獣毛の巻き物や
インテリアの布たちを展示します。

3/31. 4/3. 4. 7. 10. 11 は会場にいます。
皆様のお越しをお待ちしています。






# by kageyama_kobo | 2021-03-19 22:59 | 発表の場

紬糸、いろいろ仕入れました!

知人から「長野県に面白い糸がある所がある」という話を聞きました。
「紬の本場の長野県にはどんな糸があるんだろう?」という興味が湧いたので同行をお願いすると
OKの返事をいただきました。

在庫を見せていただくと、あらゆる種類の糸があって久しぶりに気持ちが高まります。
それでも心を落ち着けてしっかりと老眼鏡を掛け、じっくりと糸を見てゆきます。

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「21/9片」の表示があるこの糸は奇麗な生糸です。
「21デニールの生糸を9本片寄りにした」という事で、この糸の太さは189デニールになります。

私は通常生糸は使わないのですが、双紬を織る時の耳糸に使えそうです。

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このギラっとした光沢は絹紡糸の物です。わずかに残る黄色みはベトナム産の黄絹ではないかと思います。
太さに適度なムラがあるので、ストールなどを織ると面白いです。

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「5匁手紡糸」「21中1本」という表示は「5匁の紬糸に21デニールの生糸を絡めてある」という事。
こちらのご主人が「この糸を経・緯に使って双紬を織ってました」とおっしゃっていました。
この糸使いだと私の感覚では着物にするのには少々分厚い生地になるような気がします。

私なら玉糸の経糸の中にところどころに混ぜて紬糸の表情を活かしたいです。

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「3匁×21/2 ネリ」とあるのは「3匁の紬糸に21デニールの生糸2本を絡めてある」という事。
「ネリ」は精錬してあるという表示です。
大まかに160デニールの糸になります。

細くてとても光沢があり、双紬の経糸に使ったら扱いやすそうです。

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10カセくらいづつ新聞紙に平らにおいて、丁寧に巻かれていた糸がありました。
1カセごとに名前と数字が記された紙が付いています。

この糸は今となってはもう手に入れることのできない幻の糸! 国産の手引き真綿紬糸です。

我が家でも以前は長野県から手引きの真綿紬糸を買っていました。
最初は岡谷、その後は松代から紬糸を仕入れていたのですが、
松代の糸屋から送られてくる紬糸が、ある時を境にコロッと変わったのです。

そうです、この辺りから中国製の紬糸が出回り始めました。
当時としては圧倒的に人件費の安い中国で作られた糸は、品質は決して悪いものではなかったので
かなりのスピードで日本中の織物産地に広がりました。

これが原因で高価になってしまった日本製の紬糸は価格競争に負けたのだと想像できます。
そして現在では探しても見つからないほどに貴重な存在となってしまいました。

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そんな糸がこちらには残されていました。

カセごとに付けられた紙に記された苗字や名前はこの糸を紡いだ人を現し、
数字はこのカセの巻き数を表しています。

この数字は昔から日本で使われてきた紬糸の太さの表示で、単位は「回」です。
「1500」と書かれたものは「1500回の糸」と言い、
1カセの重さが40グラムに達するのに枠周1.11mで何回巻かれているかを表しています。

この糸の太さをデニールに換算するには
9000m÷(1.11m×1500回)×40g≒216デニール…となります。

匁表示でいうと5匁あたりでしょうか。

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そんな訳で長野から帰った後の三日間は、持ち帰った糸の中で太さの分からない物は
重さと長さを計り、デニールに換算して種類ごとに仕分ける作業を行いました。

カセ揚げ機で糸を揚げ返していると、指に当たる糸の感触で太さや硬さや節の状態が分かります。
目では分からない糸の表情が見えてくるのです。

色んな糸に触りながら、どんな布に織り上げようかとワクワクする瞬間です。




# by kageyama_kobo | 2021-03-09 17:10