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機織り職人の仕事場から…

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不具合を発見…よって改良!

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天候不順で糸の乾きの悪い季節です。それでもやっと乾いた糸を準備して、今日新たに紬の反物を織り始めました。

最近、紬糸座繰り糸を経糸に使った反物を織っていて気づいたことがあります。
これらの糸は毛羽立ちや節が多く経糸が切れたり閉じたりのトラブルが頻繁に起こります。

その場合いち早くトラブルの原因を発見して取り除かなくてはならないのですが、
今までの織り方ではこの“いち早く発見”をしにくい事が不満に感じてきました。

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これが今までの織り方です。普通反物のような薄い生地を織る場合は布の巾が縮まらないように織り際近くに“伸子(しんし)”を張ります。
私の場合はご覧のように布の上側に伸子を張るのですが、この伸子を織り際近くに張ってしまうと伸子が邪魔をして
織り際付近の布の状態が見にくくなってしまい、糸切れなどのトラブルを発見するのが遅れてしまった事が何回かありました。

それなら伸子を布の下側につければいいのですが、私の機の“筬柄(おさづか)”には写真のように“杼摩れ(ひずれ)”という
杼が走るガイドとなるでっぱりが取り付けられています。
下側の織り際に伸子を張ると筬を打つたびにこの杼摩れに伸子がぶつかってしまうのでここに取り付けることが出来ません。

この杼摩れという部品はどうしても必要というものではありません。
そこで、無くてもよくて邪魔なものなら取ってしまえ…ということで、30年間お世話になってきた杼摩れを取り外してしまいました。

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杼摩れが無くなり当たる物が無くなったので、めでたく伸子が布の下側のそれも織り際近くに取り付けられるようになりました。

取り外した杼摩れの重さが200グラム。この目方だけ筬柄が軽くなった⇒ということは緯糸の打ち込みにも影響が出るため、
これに代わるウエイトを取り付けなくてはなりません。

ホームセンターの木材売り場を探すとちょうどいい大きさの黒檀の板を発見。
はかり売り場まで持って行って重さを量ると350グラムありました。

少々重くなった分打ち込みのインパクトが増して好都合…と判断してこれを筬塚の下側に取り付けました。


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結果はご覧のとおり、視界をさえぎる物が無くなり目の前がすっきりした事が何より嬉しいです。
そして少々重くなった筬塚の打ち込みの感触もとても良いです。

今回織り始めた反物は40年ほど前に織った着尺の復刻です。
以前からとても気に入っていて「また織ってみたい!」とずっと思っていた柄を新しい糸使いで再現しました。

理由あって鮮明な画像をお見せすることが出来ないのですが、いずれ作品展に展示しますので気になった方はその折りにご覧下さい。



by kageyama_kobo | 2009-07-28 21:36 | 道具の話