絣織りの盛んなN村で織物組合の人に一軒の家に招き入れられました。土壁と草屋根の民家の中は小さな部屋に仕切られていて、薄暗い部屋にはサリーを織る巾1m以上の機が地面に埋め込まれる形で据え付けられています。織り手は地面を掘り込んだ穴の中に足を入れるような格好で座り、あまり明るくない裸電球の灯りを頼りに機を織っていました。
かまどのある部屋にはカセを掛けるフワリや糸巻きの枠や生活用具の鍋などが一緒に置かれていて、ここでは仕事と暮らしが一体となった生活が営まれていることを教えてくれます。
家の壁にはサリーを織るための絣の緯糸が竹の枠に巻かれて無造作に立て掛けてありました。
絣の緯糸は何本かの糸を引き揃えて染められていて、その糸をまた一本づつに分ける作業をしている女性がいました。そこに小さな男の子がトコトコとやってきて彼女の膝にちょこんと座りました。
この家では家族中が織物の仕事に携わっているとの事。この子も大きくなったらきっとこの仕事を継ぐのでしょう。
外に出てバスに向かう道で筬通しをしているおじさんに出会いました。この場面を写真に撮りたいと思ったのですがおじさんの気難しそうな顔つきに少々戸惑ってしまいました。それでもと気を取り直しておじさんに近付き、言葉が通じないのでカメラを指差し次におじさんを指差すと、おじさんは気難しそうにうなづいてくれました。数枚シャッターを切ってから胸の前で両手を合わせ「ありがとう」と言うと、おじさんはかすかに微笑んでくれました。