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機織り職人の仕事場から…

teorimono.exblog.jp

紬糸、いろいろ仕入れました!

知人から「長野県に面白い糸がある所がある」という話を聞きました。
「紬の本場の長野県にはどんな糸があるんだろう?」という興味が湧いたので同行をお願いすると
OKの返事をいただきました。

在庫を見せていただくと、あらゆる種類の糸があって久しぶりに気持ちが高まります。
それでも心を落ち着けてしっかりと老眼鏡を掛け、じっくりと糸を見てゆきます。

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「21/9片」の表示があるこの糸は奇麗な生糸です。
「21デニールの生糸を9本片寄りにした」という事で、この糸の太さは189デニールになります。

私は通常生糸は使わないのですが、双紬を織る時の耳糸に使えそうです。

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このギラっとした光沢は絹紡糸の物です。わずかに残る黄色みはベトナム産の黄絹ではないかと思います。
太さに適度なムラがあるので、ストールなどを織ると面白いです。

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「5匁手紡糸」「21中1本」という表示は「5匁の紬糸に21デニールの生糸を絡めてある」という事。
こちらのご主人が「この糸を経・緯に使って双紬を織ってました」とおっしゃっていました。
この糸使いだと私の感覚では着物にするのには少々分厚い生地になるような気がします。

私なら玉糸の経糸の中にところどころに混ぜて紬糸の表情を活かしたいです。

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「3匁×21/2 ネリ」とあるのは「3匁の紬糸に21デニールの生糸2本を絡めてある」という事。
「ネリ」は精錬してあるという表示です。
大まかに160デニールの糸になります。

細くてとても光沢があり、双紬の経糸に使ったら扱いやすそうです。

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10カセくらいづつ新聞紙に平らにおいて、丁寧に巻かれていた糸がありました。
1カセごとに名前と数字が記された紙が付いています。

この糸は今となってはもう手に入れることのできない幻の糸! 国産の手引き真綿紬糸です。

我が家でも以前は長野県から手引きの真綿紬糸を買っていました。
最初は岡谷、その後は松代から紬糸を仕入れていたのですが、
松代の糸屋から送られてくる紬糸が、ある時を境にコロッと変わったのです。

そうです、この辺りから中国製の紬糸が出回り始めました。
当時としては圧倒的に人件費の安い中国で作られた糸は、品質は決して悪いものではなかったので
かなりのスピードで日本中の織物産地に広がりました。

これが原因で高価になってしまった日本製の紬糸は価格競争に負けたのだと想像できます。
そして現在では探しても見つからないほどに貴重な存在となってしまいました。

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そんな糸がこちらには残されていました。

カセごとに付けられた紙に記された苗字や名前はこの糸を紡いだ人を現し、
数字はこのカセの巻き数を表しています。

この数字は昔から日本で使われてきた紬糸の太さの表示で、単位は「回」です。
「1500」と書かれたものは「1500回の糸」と言い、
1カセの重さが40グラムに達するのに枠周1.11mで何回巻かれているかを表しています。

この糸の太さをデニールに換算するには
9000m÷(1.11m×1500回)×40g≒216デニール…となります。

匁表示でいうと5匁あたりでしょうか。

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そんな訳で長野から帰った後の三日間は、持ち帰った糸の中で太さの分からない物は
重さと長さを計り、デニールに換算して種類ごとに仕分ける作業を行いました。

カセ揚げ機で糸を揚げ返していると、指に当たる糸の感触で太さや硬さや節の状態が分かります。
目では分からない糸の表情が見えてくるのです。

色んな糸に触りながら、どんな布に織り上げようかとワクワクする瞬間です。




by kageyama_kobo | 2021-03-09 17:10