紬の反物を織る時、織り際で織り幅の縮みを防ぐために“織り伸子(しんし)”と言う道具を使います。
市販には使いやすい物がないため、我が家では父の代から
自作の物 を使ってきました。
2013年に、さらに使いやすい“織り伸子”は出来ないものかと
試作を始めました。
そして出来たのが織り幅を1尺5分から1尺1寸5分まで
可変できる伸子 です。
作っては試しを繰り返して自分でも納得のいくものが出来上がったので、
2014年の公開講座で“機料善デビュー”しました。
この伸子は使っていただいた方々からも好評を得て制作者としては嬉しい限りなのですが、
制作の工程が多岐に亘り、とにかく時間が掛かります。
まずは竹を切る所から。
竹の水分が一番少ない11月から12月にかけて、知人の竹藪から真竹を切り出します。
この竹を一年以上寝かせて乾燥させ…
時期を見計らって長さを切り揃え、必要な幅に割ります。
小刀とサンダーを使って成形し、両端の曲げ加工を行います。
先端に付ける針はステンレスの針金を、
布に刺さりやすく抜けやすい角度に一本一本削って作ります。
長さ調節ができるよう、押えの皮ベルトを加工します。
一本づつ微妙にプロポーションが違うので、ベルトの締め具合は一本づつ調整します。
最後に“機料善”の焼き印を押して完成です。
…と言葉にしてしまえば以上なのですが、この作業に暮れから正月明けまで約半月も掛かってしまいました。
何故こんなにたくさん作らなくてはならなかったのかと言うと、
10月に開催した公開講座で、“機料善”の注文用紙にこの“織り伸子”を記載してあったため
想定外の10本もの注文が入ってしまったからなのです。
私が記載したものを後から「できません」とは言えないので今回は頑張って作りましたが
作業工程の多さが大変で、正直もう作りたくありません。
なのでこの記事を読んだあなた。
「この伸子を欲しい!」なんて、決して思わないで下さいね!