機織り職人の仕事場から…

カテゴリ:仕事場の風景( 83 )

失敗だった試し織り

前回の続きです。
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試し織りの準備も万端、いよいよ織り始めました。
しかし織り付けのこの段階で、これから先が織れなくなってしまいました。
その原因は…。

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今回は経糸に麻糸(白)と木綿糸(紺)の二種類の糸を切り返しで使っています。
綜絖で開口すると写真のように上下くっきり色が分かれるのですが…
上から見たのでは気づかなかった麻糸の毛羽立ちがこの角度からだとはっきりと分かります。

織り方は平織りですが経糸の密度の高い“畝織り”なので、
この麻糸の毛羽が邪魔をして上下の糸が交差出来なくなってしまいました。

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苦肉の策としてこの毛羽立ちを押さえるべく、麻糸に糊を付けます。
綜絖を動かして麻糸だけが上に出るようにし、この上からスプレー糊をかけます。
下の木綿糸や周囲に糊が飛び散らないよう、ご覧のように新聞紙でガードします。

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筬の手前も同様に新聞紙でガード。

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しかし、麻糸の毛羽立ちは糊で抑えられるレベルではなく、経糸の開口は不可能となってしまいました。
したがって織れない経糸は機から外すしかありません。

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“木綿×麻”での試作は失敗に終わり、この糸は残念ながら廃棄処分です。
試し織りは失敗でしたが、この糸使いは間違いだったことが分かりました。

「原因は糸の毛羽立ち」という事で、それでは次に毛羽立ちの無い糸の組み合わせを考えました。

写真上部に見えるのが二番手の“木綿×絹”での組み合わせです。
どのような結果になりますか、お楽しみに。

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今回使った麻糸(ラミー)は今年に入ってから一度使った事がありました。
その時には経糸の密度が今回ほど混んでいなかったので、毛羽立ちは問題にはなりませんでした。
糸が届いた段階では毛羽もなくとてもきれいな糸に見えたのですが
精錬や糊付けなど水を通すことで隠れていた毛羽が起きてしまったのです。

こんな失敗を繰り返しながら、糸の性質を一つ一つ理解していきます。









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by kageyama_kobo | 2018-09-12 00:01 | 仕事場の風景

試し織りのための整経

少々特殊な布の注文が入りました。

表と裏が色も質感も違う布。更に全体が立体的に波打つように…。
イメージとしては“砂漠の昼と夜”との事。


ほとんどの場合、私は糸と織り方が決まれば出来上がりの布を
頭の中に描くことができるので、試し織りをすることはありませんでした。

しかし、今回ばかりは依頼主と構想を練りながら糸や織り方は決まったものの、
さてその方法ではたして思い通りの布になるのか自信がありません。

織り幅90cm、長さ5mという注文。
とてもじゃないけどぶっつけ本番で取り掛かるのにはリスクが高すぎます。

そこで、たぶん今までで初めての“試し織り”をすることにしました。

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織り上がった布の状態を確認できればいいので経糸は短くてよし。
そこで整経長は1.6m。長い整経台のほんの片隅で十分です。

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整経長が短かすぎて本来の綾取りの位置では綾が取れないため、
通常は糸を掛けるのに使う駒を2本使って綾を取りました。


今日はこの後、巻き筬通し⇒千切り巻き⇒綜絖通し⇒織り筬通し⇒織り付け と
作業は順調に進みました。しかし、その後に少々問題が発生。

--- つづく ---





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by kageyama_kobo | 2018-09-04 22:35 | 仕事場の風景

蓮糸のストール 織っています

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7月に銀座のギャラリーで開催される『麻と蓮展』に向けて、蓮糸のストールを織っています。
蓮の糸と絹糸を半々に使う、いつものストールです。
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ハス糸も絹糸も節の多い糸なので、この節を丁寧に取り除きながらの作業になります。
そのために節取り用の毛抜きと握りバサミは常に手元に置いてあります。
柄の寸法を確認するための物差しも一緒です。
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緯糸はこの三種類。上から“蓮糸”、“濃いオリーブグリーンの絹糸”、“生成り色の絹糸”。
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織り幅を安定させるための“織り伸子”も、このストール用に作りました。


作品展は7月5日~14日。詳しいご案内はまた後日お知らせします。






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by kageyama_kobo | 2018-06-08 13:21 | 仕事場の風景

経糸の大管巻き

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今日は紬の反物を織るための経糸の準備をしています。
写真は大管巻きをしているところです。

着尺の大管巻きは半日から一日仕事になります。そこで私の仕事場には管巻き用に床に掘り炬燵のような穴を開けてあります。正座やあぐらではなく椅子に腰掛けた姿勢で作業ができるので、長時間の仕事が楽に行えます。

糸巻きの錘(ツム)の近くには重さ約5キロの分銅を置きます。振動で糸巻きが動くのが防げます。

糸巻きの向こうには“そろばん”を置きます。巻き数を記録したり、作業途中にこの場を離れる時の数の記憶用です。

織物は根気のいる作業が多いので、体の負担や作業効率を考えていろいろな工夫をするのです。




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by kageyama_kobo | 2017-09-26 23:32 | 仕事場の風景

のれんの仕立て

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我が家では“のれん”は織り上がった後は庭に張り、地直しの作業を行います。
実際には刷毛を用いて生地を水で濡らし、経緯の糸をよく馴染ませるのが目的です。

この工程を経た後に仕立ての作業に移ります。

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のれんの仕立ては母が専門に行っていました。しかし高齢化に伴い現在では私がその後を継いでいます。言ってみれば我が家ののれんはすべて“男仕立て”です。

縫い糸には生地の麻糸よりも弱い木綿の糸を用います。何かのトラブルでのれんが引っ掛けられた時、縫い糸が切れることで生地が裂けるのを防ぐためです。

縫い糸が表面に出ないよう、織り糸をすくうように針を進めます。

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影山工房でのれんを織り始めた当初から織り続けている“雨”というタイトルののれんの完成です。




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by kageyama_kobo | 2017-05-29 12:04 | 仕事場の風景

男の黒紬を湯通し…音で分かる布の良しあし

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天気予報をにらみながら昨夜遅く“男の黒紬”の糊落としを行いました。そして今朝、長い雨が続いた後の久しぶりの朝日。湯通しには絶好の薄曇りの空のもと、糊落としを終えた反物を丁寧に水洗し庭に引っ張って伸子を掛けます。

通常は水洗の終わった反物は軽く脱水機にかけてから庭に引っ張ります。しかし黒など濃色の反物は水が滴るくらいの状態で引っ張ります。太陽の熱を吸収しやすい濃色の布は乾燥が早く、水をたっぷり含ませておかないと伸子を掛け終わる前に乾いてしまうからです。

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反物が庭に張れたら伸子掛けです。布が乾く前に終われるよう大急ぎです。竹ひごの両端に短い針のついたものが伸子で、この針を反物の両耳の約1ミリ辺りに刺します。

生地に針を刺す時に“プツッ”と音がします。紺屋に生まれて若い頃から数えきれないほど湯通しをしてきた母が「この“プツッ”て音がしなかったら上等な生地じゃないよ!」とよく話していました。筬の打ち込みの甘い生地はこの音がしないのです。

今回もこの“プツッ”が聞こえて一安心でした。




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by kageyama_kobo | 2016-10-04 13:23 | 仕事場の風景

機の入れ替え

f0175143_21253172.jpg蓮糸の服地を織るのに活躍してくれた広幅の機。使命を果たした後は次の仕事の機会が訪れるまでしばらくお休みしてもらいます。

f0175143_21254954.jpg今日の午後一番に解体を始め、3時休み過ぎにはこの通り。

f0175143_21260584.jpgそう広くはない我が家で解体した機をどこに置くべきか相当悩みましたが、仕事場の壁に積み上げるように収納することを決定。

あれだけ大きく感じていた機でしたが、解体してみると「たったこれだけ?」と思うくらいコンパクトになってしまいました。

f0175143_21261940.jpgその後は通常使う着尺機を組み立て、今日の午前中に筬通しまでしておいた次の仕事の“黒無地の紬反物”を織りつけました。


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by kageyama_kobo | 2016-09-10 22:07 | 仕事場の風景

蓮糸100%の服地…いよいよ織り始め!

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今月に入ってから準備を始めた“蓮糸100%の服地”。試し織りを経て本番に向けての不安材料を一通りクリアーした準備が終わり、いよいよ昨日から織り始めました。

綜絖や踏み木を結ぶ紐などはすべて新調したため、織り始めはこれらが少しづつ伸びてくるので調整に時間がかかりました。綜絖や筬塚の位置や高さも、実際に織りながら体に合わせて調整していきます。

これだけの広幅の機に座るのは学生時代以来なので、実に40年振りです。

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綜絖の幅は90㎝。今まで織っていた小幅の綜絖と比べると、シャトルが楽に走るための開口を得ようとすると、踏み木を踏み込む力は倍以上必要だという事を実感しました。そして90㎝の織り幅の経糸の間にシャトルを途中で止まることなく投げるコツをつかむまでしばらく時間がかかりました。

仕事場にはエアコンも入っているのですが、それでも汗がにじんでくるのでねじり鉢巻きで織っています。

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経糸を木枠に巻く段階で節や結びこぶを丁寧に取り除いておいたので、試し織りよりもはるかにきれいに織り上がったように感じます。同時に経糸の切れる回数も少なく(それでも結構切れる)、体が機に慣れるほどに織りのリズムもつかめて、作業が楽しくなってきます。

真ん中に置いてあるデニムの布は、少々膨らんできた私の腹部が織り上がった布とこすれるのを防ぐためのものです。同時に握りハサミなど小さな道具の置き場所にもなりました。

これから幾日間か“織っては切れた経糸をつなぎ…”を幾度となく繰り返す修行の日々が続きます。
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by kageyama_kobo | 2016-08-24 22:20 | 仕事場の風景

床に開けた穴

f0175143_236479.jpgこの度改装した新しい仕事場には、床に40㎝×60㎝ほどの穴が開けてあります。一見すると台所などに見られる“床下収納庫”のようにも見えますが、実はそうではありません。

普段はご覧のように蓋をして床として使えます。そして、ある仕事をする時にこの蓋を開けるのです。

f0175143_2381245.jpg穴の深さは約40㎝ほどで、この部分は箱になっています。この箱を引き上げるとぽっかりと穴が開いて床下の点検のための出入り口にもなります。

f0175143_2383780.jpg本当の使い方はご覧のとおり。

最近になって管巻きの時に床にあぐらをかいたり正座をすると膝に痛みを感じるようになりました。

特に経糸を大管に巻く時は長時間座り続けなくてはならないのが辛かったのです。

そこで椅子に座る体制ならば膝に負担が少なく管巻きの作業が楽になると思い、この穴の事を思いついたのです。

結果は大成功で、大管巻きがとても楽になりました。

私は今年還暦を迎えました。そこで、来たるべき自身の高齢化に備えて新しい仕事場にはこのような“老体に優しい工夫”を随所にちりばめてあります。

他所に預けてあった仕事道具もすべて仕事場に納まり、棚や吊り金具の取り付けもほぼ終わって、先週10ケ月振りに機織りの仕事が再開できるようになりました。あれこれと工夫を凝らした仕事場が予想通りしっかりと機能してくれるのかを確認しながらの再出発です。

工夫の成果が出ましたら、また紹介していきたいと思っています。
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by kageyama_kobo | 2016-03-31 23:54 | 仕事場の風景

いよいよ、始動!

皆様、お久しぶりです。

昨年6月から始まった工房・自宅の改修工事がようやく完了しました。
とは言え現段階では器ができただけで中身はまだこれから。仕事の道具を配置するための棚やフックを取り付けたり、道具類をすぐに使えるように配置したりしなければならず、実際に仕事にかかるまでにはまだしばらくかかりそうです。
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それでも早く機に触りたいという気持ちから預けてあった機を工房に持ち込み、今日はその大掃除を行いました。

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私の使う機は我が家で50年近く使い続けてきたもので表面には長年の埃がこびりついてかなりの汚れ様でした。重曹で磨き上げるとさっぱりとした木の表情になりました。

明日はこの機を組み立てて、仕事を始動する気持ちを盛り上げたいと思っています。
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by kageyama_kobo | 2016-03-03 01:31 | 仕事場の風景