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機織り職人の仕事場から…

カテゴリ:色があり柄があり…( 51 )

絹糸染めの染料テスト

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最近になって紬の反物の糊落としに問題があることを発見しました。

私は糸の糊付けにデンプン糊を用います。
デンプンは通常の湯通し(水の中で糊を揉み出す)では完全に落とすことができません。
生地に糊が残留すると硬さが残り、仕上げた後も繊維本来の風合いを出すことができません。
この落ちにくいデンプン糊を落とすためにデンプン分解酵素を使って糊落としをします。

この方法で糊落としをする場合、糸を染めてある染料が溶け出さないように
なるべく低温で処理しなくてはなりません。
そのためには長い時間生地を酵素液の中に漬けておく必要があります。

その結果、上の写真の矢印の部分のように染料が溶け出して薄い部分ににじみ出ることがあるのです。
こうなると、せっかく手間暇かけて織り上げた生地が売り物にならなくなってしまいます。

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そしてこの度、薄いベージュの地に濃い色の柄の入る反物を織ることになりました。
また糊落としで色のにじみが出てしまっては困るため、簡単な「色移りのテスト」を行いました。

今回使う予定の色糸と地色の糸を写真のように結びつけて、糊落としと同じ温度のぬるま湯に
同じ時間だけ漬け込んでみたのです。

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上の写真は8時間の漬け込みを終え、手で絞った状態です。
これからこの糸の結び目を解いていきます。

ここから下は、色糸と地色の糸が接していた部分を並べた写真をご覧いただきます。

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前回問題だった赤の染料ですが、今回新たに堅牢だといわれる染料を2色試しました。
写真の染料はオレンジがかった赤の染料です。
色移りはほとんどなく、これは使えそうです。

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もう一種類の赤は、矢印の部分に色移りが見られました。不合格です。

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ほんの少しコバルトブルーを使いたくて試してみました。
色移りは全くなく、合格です。

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植物染料で下染めをした上に、黄茶の染料をベースに染めた濃いヤマブキ色です。
矢印の所にわずかに赤茶の色移りがありましたが、かろうじて合格。

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このこげ茶は以前に使った糸の残糸です。染料の種類はもう調べることはできませんが
矢印の部分にわずかな赤茶色のにじみが見られました。
今回の用途からしたら、ギリギリ合格。

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この赤茶色はくっきりと色移りが見られました。
残念ですがこの染料は不合格。
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上の赤茶と同様、この緑もかなりの濃さでにじみが出てしまいました。
色が気に入っていただけに残念です。不合格!


私が使う化学染料はそれほど種類は多くないのですが、それでも今までに
「淡色ではいい色なのに、濃色に染めると色が止まらない」とか、「長期保存しておくと
空気中の水分を吸収してゼリー状になってしまう」などの個性的な染料がいくつかありました。

今回の色移りもそうですが、このような染料の個性は実際に使ってみないと分からないものです。
私は少しでも自分の使う染料に疑問があった場合、今回のようにテストをしてみます。

それともう一つ、染料を買い求めた染料屋に問い合わせてみることも大切です。
使った結果を伝えると、より良い染料を紹介してもらえることもあります。






by kageyama_kobo | 2019-09-25 21:59 | 色があり柄があり…

七色縞の紬

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先のブログで染め方を掲載した糸を使って紬の反物を織っています。
一幅の中に七色の縞模様が15組。色の並びをすべて変えた縞作りをしました。

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織り上がった部分を見ると春に似合いそうな色柄ですが、帯や小物を工夫することで秋にも使えそう。





by kageyama_kobo | 2017-12-07 22:21 | 色があり柄があり…

七色の糸を染める

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現在準備をしているのは単衣で着られる紬の反物です。柄はベージュの地に七色の縞模様。

私はこの七色の糸を二釜(色ごとに染色する釜のお湯を入れ替えることなく)で染めます。
今回はこの染め方のお話しをしましょう。

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写真左側の絞り棒に掛かった糸の中で、一番左側の薄茶色の糸が渋木とカテキューを混ぜて
下染めした経糸用の玉糸です。

この糸に化学染料を上掛けすることで七色すべてを染め上げます。


①黄色…新しい染液に黄色と黄茶の染料を溶いて深みのある黄色を染めます。
        ↓
②オレンジ…黄色を染めた染液に赤と黄色の染料を加えて柿の実の色に染めます。
        ↓
③赤…オレンジを染めた洗液に赤と赤茶の染料を加えて渋めの赤を染めます。
        ↓
④茶…赤を染めた染液に緑の染料を加えて赤味を抑え、さらに茶色の染料を加えて染めます。
        ↓
⑤紫…茶を染めた染液を1/3ほど捨て、水を加えて加熱。そこに紫の染料を加えて染めます。

ここまで一釜で5色の糸が染まりました。

紫の色素が残った染液できれいな青を染めるのは不可能なのでこの染液はここで捨てます。
次に新たに釜にお湯を沸かして


⑥青…青と緑と茶の染料を混ぜてコクのある青に染めます。
        ↓
⑦緑…青を染めた染液に黄色・緑・茶の染料を加えて深い緑色を染めます。


という訳で、二釜で七色の糸が染まりました。

それぞれの色をきれいに出すコツは、色ごとに染料を糸にしっかり吸収させることです。
色素の吸収を促進させる酢酸の量と染液の温度管理、さらにはムラ染めにならないよう糸繰りを
丁寧に行うことでこの連続染めは可能となります。

この方法を使うと、時間・燃料・水・染料などあらゆる面で効率よく糸を染めることができます。









by kageyama_kobo | 2017-11-09 23:04 | 色があり柄があり…

マスクメロンがモチーフ

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「マスクメロンをモチーフにした布を織って欲しい」という依頼を受けました。
「用途はどんな布でしょうか?」と尋ねると「ストールやその他いろいろ…」との事。

最初にイメージが浮かんだのはマスクメロンの網目模様を蓮の糸で織ってみたら面白そうという事。
皮の緑と実のオレンジは絹糸がいいな…と。

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そこで早速、蓮の糸をカセに上げてアク抜きのために精錬します。

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緑とオレンジの絹糸は、以前から糸蔵で出番を待っていた座繰りの太糸を染めました。

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織り方は“模紗織り”。糊付けされた糸は締っているので、機の上ではこのようなサラリとした表情です。

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織り上がった布はフリンジを作り糊落としをします。

糊が落ちると蓮の糸も絹糸もふっくらと本来の風合いを取り戻します。

お客様からアイデアをいただいて、私一人では決して思いつくことのない質感や色使いの個性的な布が織り上がりました。





by kageyama_kobo | 2017-08-29 21:02 | 色があり柄があり…

新柄のれん“松煙ダイア”

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生成り地に松煙染めの絣で麻のれんを織り始めました。織り始めは白地にグレーの棒縞なので囚人服かパジャマ地のような柄に見えましたが、柄が絣に差し掛かると雰囲気が一変します。

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絣に染めた二種類の経縞をずらして柄を織り出します。絣の重なりで白とネズの菱形模様が浮かび上がります。

この大きなずらしの経絣は父と二人で開発した我が家独特の技法です。



by kageyama_kobo | 2016-11-17 20:01 | 色があり柄があり…

久しぶりの“蓮糸のストール”

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久しぶりに“蓮糸のストール”を織り始めました。記録を調べたら前回織ったのは6年も前でした。

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私の織る蓮糸のストールは蓮糸と絹糸を50%:50%で使います。写真に見える生成り色の糸が蓮糸で、濃い色(濃いオリーブグリーン)の糸が絹糸です。そして今回使う蓮糸は今までで一番細く、絹糸の太さに換算すると480デニールです。

この蓮糸と組み合わせるために絹糸を特注しました。
糸屋に注文の電話をしたところ300デニールの座繰りの玉糸があるというのです。そこでこの糸を2本合わせて片撚りとし、600デニールの糸を作ってもらいました。絹糸は精練すると約80%に目減りするので600デニール×0.8=480デニールとちょうど同じ太さになります。

蓮糸にも玉糸にも自然なスラブ(糸に太い細いの変化)があって“糸味たっぷり”の布になりました。織り上げた後、糊落としをすると蓮糸と絹糸の風合いが混ざり合ったとても魅力的な布に仕上がるはずです。

このストールは次の作品展(静岡市・亀山画廊 12/1~13)でお披露目する予定です。











by kageyama_kobo | 2016-10-11 23:16 | 色があり柄があり…

“男の紬” 織ってます!

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しばらくブログのアップが滞っていましたが、実はその間忙しく働いていました。3月は年度末ということで仕事の合間に確定申告をしたり、地域の役員の資料をまとめたり、ライフワークの野鳥の調査結果を集計したりと、毎日頭の中がごちゃごちゃの日々が今も続いています。

4月9日から東京銀座の一穂堂サロンで“男の紬・糸の味”をテーマに作品展を開きます。ここ何年か、絹糸の種類や撚り方などから生まれる布の風合いの違いに関心を持ち、機会あるごとに個性的な絹糸を買い求めてきました。今回の作品展はその糸を実際に布に織ったらどうなるかという結果報告の催しになります。

夫々に糸を選び色を選んで絹糸の持つ“糸味”を意識しながら織り上げた“男の紬・新作10反”がメインの展示になります。色と柄だけではなく、風合いや手触りも意識した布創りを心掛けました。

現在は最後の一反を織っているところです。織り上がりの布幅を一尺一寸にしました。これだけあれば身長180センチ以上の方にもたっぷりと布をつかった仕立てが出来ると思います。

写真の布には“音楽”を織り込みました。メロディーのドレミを数字に置き換え、これを縞模様にデザインしたものです。どんな曲を織り込んであるのかは、会場でお話ししたいと思います。
by kageyama_kobo | 2014-03-13 09:19 | 色があり柄があり…

八丈島で見つけた宝物 “まるまなこ” 

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私が二十歳の時の夏休み、伊豆七島の一つ八丈島に“黄八丈見学の旅”に出掛けました。幸運な出会いから黄八丈に携わる多くの人たちや沢山の資料に接することが出来ました。その旅の最後の日、島の南部にある黄八丈の糸染めを専門に行う染物屋さんを見学に行きました。体中を汗疹だらけにして働くお爺さんの職人さん。時間をわきまえずに訪れた私に親切に昼食をご馳走してくれたおばさん。みんないい人たちばかりでした。

充実した時間を過ごして丁寧にお礼を述べ、帰りのバスを待つ間近くの土産物屋を覗いていると棚に“黄八丈”の本を見つけました。「これください」と言うと店のおばさんが「黄八丈に興味があるのかい?」と聞きます。「はい、今そこの染物屋さんを見学してきました」と答えると「昔はこんな柄も織っていたんだよ」と2枚の小さな黄八丈の布切れを見せてくれました。あまりにも魅力的なその柄に見とれていると「欲しかったらあげるよ」と言ってくれたのです。迷う事無く「ありがとうございます!」と言った後で「この柄の名前は何て言うんですか?」と聞くと「たしか“まるまなこ”だと思ったね」との事でした。
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この柄を何とか紬で織ってみたいと思った私は、家に帰ってからこの小さな布切れをルーペを覗きながら針で解き、組織を方眼紙に写し取っていきました。オリジナルの配色は黄八丈の黄色・茶色・白・黒の4色でしたが、私はこの柄を青・赤・緑・ネズ・茶など色々な糸を使って反物に織りました。

黄八丈の生地では気付かなかったのですが、緯糸に紬糸を用いてこの柄を織ると糸の不規則な太さの変化が現れて“糸味を活かした布”になることが分かりました。

そして今、20年振りにこの柄の反物を織っています。どんな色で織ってもゴージャスな雰囲気の生地になるのですが、今回は地色にわずかに緑味のネズ“利休鼠”を用いて渋い雰囲気の反物になりました。

私は通常反物は平織りでしか織らないのですが、この柄は私が“綾織り”で織る唯一の反物です。
by kageyama_kobo | 2013-08-30 21:40 | 色があり柄があり…

焦げ茶地・多色細縞紬

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来年春の作品展に向けて“男の紬”を織っています。今回のデザインは焦げ茶の地に十色の糸で縞を入れます。
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最近になって、着尺の縞をデザインする時に“不規則”とか“ランダム”とか“でたらめ”というテーマを用いることが多いです。

このテーマに沿って、今回の10色の縞は色の並びが二つと同じパターンが無いように並べました。

「そうする事でこうなる!」というはっきりとした効果がある訳ではないのですが、このでたらめな色の並びはこの世に二つと無いもので、その事が作者としては何となく心地よく感じられるのです。
by kageyama_kobo | 2013-07-06 13:36 | 色があり柄があり…

帯にイニシャル、入ります!

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注文をいただいたリバーシブルに使える“昼夜織りの帯”です。この織り方は一工夫すると字や絵を描くことが出来ます。そこで、この帯に限ってご注文いただいた方のイニシャルを入れることにしました。

今回の依頼主は“マチコさん”。なので“M”の一字を手先に織り込みました。
by kageyama_kobo | 2012-12-15 12:52 | 色があり柄があり…