機織り職人の仕事場から…

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失敗だった試し織り

前回の続きです。
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試し織りの準備も万端、いよいよ織り始めました。
しかし織り付けのこの段階で、これから先が織れなくなってしまいました。
その原因は…。

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今回は経糸に麻糸(白)と木綿糸(紺)の二種類の糸を切り返しで使っています。
綜絖で開口すると写真のように上下くっきり色が分かれるのですが…
上から見たのでは気づかなかった麻糸の毛羽立ちがこの角度からだとはっきりと分かります。

織り方は平織りですが経糸の密度の高い“畝織り”なので、
この麻糸の毛羽が邪魔をして上下の糸が交差出来なくなってしまいました。

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苦肉の策としてこの毛羽立ちを押さえるべく、麻糸に糊を付けます。
綜絖を動かして麻糸だけが上に出るようにし、この上からスプレー糊をかけます。
下の木綿糸や周囲に糊が飛び散らないよう、ご覧のように新聞紙でガードします。

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筬の手前も同様に新聞紙でガード。

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しかし、麻糸の毛羽立ちは糊で抑えられるレベルではなく、経糸の開口は不可能となってしまいました。
したがって織れない経糸は機から外すしかありません。

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“木綿×麻”での試作は失敗に終わり、この糸は残念ながら廃棄処分です。
試し織りは失敗でしたが、この糸使いは間違いだったことが分かりました。

「原因は糸の毛羽立ち」という事で、それでは次に毛羽立ちの無い糸の組み合わせを考えました。

写真上部に見えるのが二番手の“木綿×絹”での組み合わせです。
どのような結果になりますか、お楽しみに。

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今回使った麻糸(ラミー)は今年に入ってから一度使った事がありました。
その時には経糸の密度が今回ほど混んでいなかったので、毛羽立ちは問題にはなりませんでした。
糸が届いた段階では毛羽もなくとてもきれいな糸に見えたのですが
精錬や糊付けなど水を通すことで隠れていた毛羽が起きてしまったのです。

こんな失敗を繰り返しながら、糸の性質を一つ一つ理解していきます。









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by kageyama_kobo | 2018-09-12 00:01 | 仕事場の風景

試し織りのための整経

少々特殊な布の注文が入りました。

表と裏が色も質感も違う布。更に全体が立体的に波打つように…。
イメージとしては“砂漠の昼と夜”との事。


ほとんどの場合、私は糸と織り方が決まれば出来上がりの布を
頭の中に描くことができるので、試し織りをすることはありませんでした。

しかし、今回ばかりは依頼主と構想を練りながら糸や織り方は決まったものの、
さてその方法ではたして思い通りの布になるのか自信がありません。

織り幅90cm、長さ5mという注文。
とてもじゃないけどぶっつけ本番で取り掛かるのにはリスクが高すぎます。

そこで、たぶん今までで初めての“試し織り”をすることにしました。

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織り上がった布の状態を確認できればいいので経糸は短くてよし。
そこで整経長は1.6m。長い整経台のほんの片隅で十分です。

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整経長が短かすぎて本来の綾取りの位置では綾が取れないため、
通常は糸を掛けるのに使う駒を2本使って綾を取りました。


今日はこの後、巻き筬通し⇒千切り巻き⇒綜絖通し⇒織り筬通し⇒織り付け と
作業は順調に進みました。しかし、その後に少々問題が発生。

--- つづく ---





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by kageyama_kobo | 2018-09-04 22:35 | 仕事場の風景

蓮の糸に撚りをかける

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私の“蓮糸の布”を見た方が、東南アジアを巡って4種類の蓮糸のサンプルを届けて下さいました。
それぞれ色も違い特徴もバラバラでしたが、カセに上げ返し精錬をしてみたところ
いずれの糸も今まで私が使ってきた糸と同等かそれ以上の品質でした。

そんな中で特に気になったのが一番右側にある少々色の薄い糸です。
糸の表面のきめが細かく、手触りもとても柔らかなのです。
その原因の一つとして考えられるのが、撚りがかかっていないこと。

引っ張り強度の弱い蓮糸に撚りがかかっていなければ経糸には使えません。
そこで、自分で撚りをかけて糸の風合いと強度の変化を調べてみました。

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撚りかけに使った道具は紡毛機です。何十年ぶりで動かすので回転部分にグリスを付け、
ベルトのテンションを調整しました。

この紡毛機はある方から譲り受けた物です。
さすがにスコットランドの名機、長い眠りから目覚めてもすぐに快調に回り、
気持ち良く仕事をさせてくれます。

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弱い糸なので糸抜けが起きないか心配でしたが、
糸には無事に撚りがかかりボビンに巻き取られていきます。

ベルトをハイスピード側に掛けて回すと、べダル一踏みでフライヤーが8回転します。

最初は1mに100回の撚りをかけたのですが、ルーペで確認すると何となく頼りない感じ。
それでさらに増し撚りをかけて1m160回としました。

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右が撚りかけ前、左が撚りをかけた糸です。
写真ではわかりづらいのですが、確かに糸全体が引き締まった感じがあります。

確認のため何本か合わせて引っ張ってみたのですが、撚りをかけた方が
明らかに切れにくい糸になっていました。

撚りをかける事によって糸の柔らかさが損なわれるのではないかと思っていたのですが、
こちらに関してはわずかの変化しかなく、柔らかさは保たれていました。

もしもこの糸で布が織れたら、きっと今までにない手触りの布が生まれるでしょう。






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by kageyama_kobo | 2018-09-02 22:56 | 染めと織りの素材