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機織り職人の仕事場から…

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藤井慎介*影山秀雄 木工染織展 in 八ヶ岳倶楽部

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今年最後の作品展を“八ヶ岳俱楽部”にて開催します。
いつもの相棒:木工の藤井慎介さんとの二人展です。
木と布は相性がよく、彼とのジョイントはいつも楽しみです。

“八ヶ岳俱楽部”は今までは夏の開催でしたが、今回は初めて秋の開催です。
今までお見せ出来なかったカシミヤ・キャメル・ヤクのストールやマフラーなどを準備しています。

会期中は二人で皆様をお待ちしています。紅葉の八ヶ岳に是非お越し下さい。

# by kageyama_kobo | 2021-10-25 22:44 | 発表の場

私の仕事の必需品 “吊りろくろ”

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20代の頃、紬を織っている時はほとんど平織りだったので綜絖は2枚。従って“ろくろ”は1本。
しかし最近では4枚綜絖を使う機会が多いため、私の機には“吊りろくろ”が付けっぱなしです。

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平織りの時はこんな風に吊ります。

私の仕事の必需品 “吊りろくろ”_f0175143_21091191.jpg
綾織りや摸紗織など綜絖を4枚使うときはこのように吊ります。

言葉と写真ではこれで解説は済んでしまうのですが、
それでは綜絖2枚の状態から4枚に変える時、また逆に4枚を2枚に変える時、
みなさんならどのように変えますか?

もとより、4枚の綜絖がそれぞれ自由に上下できる仕掛けが“吊りろくろ”です。
新たに綜絖を吊り直そうと思っても吊りヒモはそれぞれ勝手に動くので安定しません。
そこで“ろくろ”をがっちり固定しなくてはならないのですが、これがなかなか安定しない。

あれこれ考えた末に、決定版の解決策を思いつきました。

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中央に吊り下げているのは重さ1.2キロの分銅です。
そしてこの分銅を吊っているヒモは、二本の“子ろくろ”に巻き付けています。

肝心なのはヒモを“子ろくろ”に二周巻き付ける事。
このヒモの摩擦のお陰で、綜絖を吊り下げるヒモはどこを引っ張ってもビクともしません。

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この方法を使うようになってから、不自由なく綜絖を吊る作業ができるようになりました。

# by kageyama_kobo | 2021-10-14 21:45 | 仕事のコツ

新しい道具 “棒杼”

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テーブルセンターやストールなどを織る時、経糸にフリンジのスペースを確保する必要があります。
織り幅が狭い場合は幅1.5㎝ほどに切ったボール紙を挟んでいく方法もありますが、
通常は写真のように太めのヒモを粗く織り込んでいきます。

この時、経糸の開口に指を入れてヒモを順に送っていく作業がもどかしく、
何とかスーッと通す方法はないものかと考えました。

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そこで思いついたのがこの道具。
全長が65㎝ほどあるので、広幅のストールにも十分使えます。

新しい道具 “棒杼”_f0175143_13001720.jpg
先端にヒモを通す穴を開け、一か所に切れ目を入れます。
この切れ目を使えばヒモはどの位置でも穴に通したり外したりできます。

開口した経糸に引っ掛からない形にして、更に細かいサンドペーパーで磨き上げると、
経糸に負担を掛けずに速やかにヒモを通すことが可能となります。

新しい道具 “棒杼”_f0175143_13232044.jpg
反対側の持ち手の部分には竹の節を残してあります。
持ちやすくなるのと同時に、背中が痒い時に“孫の手”の代わりとして重宝します。


市販では見かけない道具ですが、“棒杼”とでも名付けましょうか。

# by kageyama_kobo | 2021-10-11 13:32 | 道具の話

単糸の緯糸を継ぐ方法

現在“リネンのテーブルマット”を織っています。
経糸が8/2で緯糸が4/1です。

なぜ緯糸に単糸を使うのかと言うと、単糸には微妙な太さのムラがありこれが布に表情をつけてくれるからです。
そしてもう一つの理由は、単糸の方が双糸などよりも緯糸の継ぎ目を目立たなくすることができるから。
単糸の緯糸を継ぐ方法_f0175143_21401924.jpg
その継ぎ方は、まず緯糸を管に巻くときに切り口をハサミで切らずに糸の撚りを戻して引き抜きます。
そうすることで切り口がテーパー状になります。

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緯糸を継ぐ段階で、このテーパーを上手く重ねて織り込んでいきます。

単糸の緯糸を継ぐ方法_f0175143_21395868.jpg
赤い矢印の段を見て下さい。
二本の糸が重なっていることが分かると思います。
でも太さは一本の糸と同じに見えませんか?

布が織り上がってしまうと、この継ぎ目はほとんどわからなくなります。

# by kageyama_kobo | 2021-09-29 21:56 | 仕事のコツ

アゼ返し(綾返し)

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“千切巻き”の作業の始めに経糸を千切布に結びつけた後、綾棒を巻き筬の手前に移動させる
アゼ返し(綾返し)という作業があります。

綾棒を筬の向こうで抜いて手前に差し込むまでの間、綾棒で割られた経糸の上下をしっかり開いておく道具として
ほとんどの方は“ものさし”を使っているのではないでしょうか。

私も何十年もの間何の疑いもなく“ものさし”でこの作業を行ってきたのですが、
今頃になってこの“ものさし”に不満を感じるようになってきました。

理由は
①“ものさし”の先の角が直角なので、綾棒に沿って差し込む時に経糸に引っ掛かりやすい。
②“ものさし”を立てて経糸が開いた状態を維持したいとき、厚みがないのですぐ倒れてしまう。

上記の2件の問題を解決すべく、新しい道具を作りました。

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比較するために“ものさし”と並べてあります。
全長は私の仕事のしやすさから二尺指しより少し短い62センチ。

“ものさし”の幅2センチに対して、新しい道具は幅3センチ。
厚みも“ものさし”の4ミリに対して7ミリほどあります。

①の問題を解決すべく先端を60度の角度で切りました。さらには経糸に引っ掛からないよう
全体を細かなサンドペーパーでツルツルに磨いてあります。

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②の問題を解決すべく上下の面を平らに削って倒れにくくしました。
綾棒を入れ替えたり経糸を櫛で梳くときの作業が格段にやりやすくなりました。


私は“アゼ返し”が終わってもこの棒は抜きません。
千切巻きの最後まで“巻き筬”の先で経糸を上下に割っていくことで
筬に経糸が引っ掛かる確率がグッと減るからです。

千切巻きの最後に筬を抜くときも、糸が上下に割れていることで
素直に筬が抜けてくれます。




# by kageyama_kobo | 2021-09-27 22:25 | 道具の話