2021年 08月 10日
先日、珍しい素材と色の布の注文を受けました。
依頼主のご希望は「木綿と絹と麻の3種の糸を使った作務衣を作りたい。色は紫」との事。
「木綿と絹と麻」という糸使いは以前に一度織った事がありました。
その時の端布を引っ張り出してみると、作務衣にも使えそうななかなか良い風合いです。
身の程知らずに買い集めた沢山の糸の中からこの布に使った糸を探し出すのに少々時間が必要でしたが、
経糸3種に緯糸1種の4種類の糸が何とか見つかりました。
これで糸は準備できたのですが、問題は“色”です。「紫」というご希望ですが、
この色には私は苦い経験があります。
私がまだ20代の頃に知人から「紫の着物を織ってちょうだい!」という注文をいただきました。
当時から「紫は紫外線で退色しやすい」という事を知っていたので「他の色ではだめですか?」と
色の変更をお願いしたのですが「一番好きな色が紫なので、是非!」と言われ、絵羽柄の紬の反物を織りました。
無事に織り上がり、次は糊落とし、そして庭に張って伸子を掛けて干し上げます。
干し上がった布を取り込み、家の中に持ち込んで端の部分をまくった時、心臓が止まりそうになりました。
表と裏の色がくっきりと違うのです。つまり“色焼け”ですね。
「やっぱり紫はダメか!」と痛感しました。
結局この反物はお客様に収める訳にはいかず、無理を言って他の色に変更させていただきました。
なので今でも我が家のどこかにある筈ですが、もう見たいとは思いません。
以上のような経験から「もう紫の布は織るまい!」と心に決めていたのですが、
最近になって染料屋のカタログで下のような染料を見つけました。
こう書くからには紫外線に対する堅牢度も高いはず。そして“直接染料”なので木綿・絹・麻のどれにも使えます。
早速この染料を取り寄せ、この色を基調に何種類かの染料を加え色を合わせて糸を染めました。
経糸に木綿と絹と麻、緯糸は木綿のスラブ糸を使います。
繊維の違いにより色の発色や光沢もまったく違うので、
この三種類の糸が織り出す布がどのような色や風合いになるのかとても楽しみです。
そして、この紫の染料の堅牢度がどの程度あるのか確認したいと思います。
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by kageyama_kobo
| 2021-08-10 23:28
| 染めと織りの素材